A話、聖夜とバツ
〜A話、聖夜とバツ〜
これは少し前の話、高校一年生の冬の話。
今は12月24日の昼前、いわゆるクリスマスイブの日。
ちょうど退院している期間中だったので、僕はマルくんに誘われてショッピングモールを見に行く約束をしていた。
防寒も準備も終わってるしそろそろマルくんも迎えに来る時間のはず…その時、
ピンポーン——
インターホンが鳴った。
急いで僕は玄関へと向かい、ドアを開けると…
「やあクロス、迎えに来たよ？」
「ありがとうマルくん、それじゃ準備も済んでるし行こっか！」
「うん、行こう！」
そのまま僕らは歩き出した。
「ねえクロス？」
歩きながら、マルくんが僕に話しかけてきた。
「どうしたの、マルくん？」
「去年のこの時期は、確か入院中だったよね？」
「うん、だからこうして外で一緒にクリスマスを過ごすのは2年振りかな」
「やっぱり、そうだよね」
だとか、久しぶりに2人で外を歩ける嬉しさを感じて話しながら歩く。
その間に僕らは目的地のショッピングモールに着いた。
「わぁ、話には聞いてたけど思ったより大きいね、マルくん！」
このショッピングモールは僕が入院している間に出来た物で、とにかく色んな施設が入っているという事で近所じゃ話題になっている場所だった。
なんでも、この縦浜で一番大きいらしいショッピングモールらしい。
「へへへ…僕もクロスと来るのが楽しみだったから、実はまだ来たこと無かったんだよね…」
「そうなんだ？ じゃあ今日は一緒に、いっぱい楽しまなきゃね！」
おもちゃ屋、雑貨屋と回って、お腹が空いてフードコート。
お昼ご飯を食べ終えた時、マルくんが言った。
「…クロス、ちょっと僕さっきの店に忘れ物したかも…」
「え、それなら急いで行って来なよ！ 僕ちょうどトイレ行きたいからさ…」
「うん、ありがとう…！」
マルくんは駆けだして、さっき来た方へと行った。
僕も早く片付けて、トイレ行かなきゃ…
その後は普通に合流して、夕方まで二人であちこち回って時間を潰した。
窓の外をふと見ると、既に空は暗くなっていた。
「わっ、見てクロス！ あそこ見に行こうよ！」
マルくんが窓の向こう側、とある場所を指差す。
「良いね、行こうよ！」
その場所を見て、僕も乗り気でOKを出す。
そして外、その場所に着く…
その場所はショッピングモールの中庭だった。
何本もの木が植えられていて、その木一本一本が色とりどりの電飾で飾りつけられていた。
「そっかぁ、今日クリスマスイブだもんね…」
僕は周りを見回しながら呟く。
「…ねえ、クロス？」
話しかけてくるマルくん、僕は振り向いて応える。
「ん、どうしたのマルくん？」
「はい、これあげる！」
そう言いながらマルくんは、カバンから小さな紙袋を取り出してこちらへと差し出してきた。
「えっ…？ これ、何？」
「クリスマスプレゼント、実はこっそりさっきの雑貨屋で買っておいたんだ…」
「…ありがと、マルくん！」
僕はニコッと微笑んで差し出された物を受け取った、その時だった。
空からちらほらと、白いものが降ってきた。
「えっ、これって…」
「雪、だね…」
マルくんが答えた。そう、突然雪が降り出したんだ。
「…凄い、綺麗だね…」
僕は少し微笑んで、ベンチに腰掛けて上を見上げた。
「うん、そうだね…」
マルくんが隣に腰掛ける。
そのまま二人、何を話すでもなくただずっと、しばらく夜空を眺めていた。
途中で僕がくしゃみをしてから、もうそろそろ帰ろうかという話になって、マルくんに家まで送ってもらった。
貰ったプレゼントを紙袋から取り出してラッピングを解くと、中からはユキヒョウ模様のマグカップが出てきた。
この時から、僕の宝物はこれになった。
