4話、昼食とマル
〜4話、昼食とマル〜
校内に休み時間を告げるチャイムが響き渡る。
久しぶりの授業にクロスがついていけているのか心配になって、僕はいつもこのタイミングで彼の方を見る。
その時はちょうどクロスが自分の机の上を片付けているところだった。
「おーい、クロスー!」
僕はクロスに向けて声を投げかける。
「あ、マルくん…!」
それに気付いてくれたクロスは嬉しそうにこちらを見る。僕は笑い返してそばへと寄る。
「久しぶりの授業、どうだった?」
「うん、マルくんのおかげでちゃんと内容解って授業受けられたよ」
「ふふっ、なら良かった」
僕は優しく笑って見せる。
「それじゃ、お昼ご飯食べに行こう!」
「うん、そうしようか」
クロスもそれに応えるように笑って、一緒に教室を出る。
食堂、僕らは受け取った昼食を持って四人掛けの席へと着く。もしあの二人が来た時用に、だ。
「ねぇ、クロス?」
少しして僕は話しかけた。
「マルくん、どうしたの?」
「えへへ、やっぱりこうして一緒に学校に居られるのって嬉しいなぁって思ってさ」
クロスの入院している間は、当然お見舞いの時しか一緒にいられない。
学校にはレクとトライは居るが、やっぱりクロスが居ないと少し物足りない。だからこそ僕は退院している間はこういう時間を大切にしたいと思う。
「じゃあさ、マルくん。今日帰りにちょっと寄り道しない?」
思いもよらずクロスから誘いを受け、僕は提案をする。
「それ良いね、二人も誘ってみる?」
「うーん、でも多分あの二人の事だから──」
「おーい!マル、クロス!」
その時ちょうど、僕らを呼ぶ声がした。
「レク!それにトライ!」
もちろんそれは”その二人”だった、僕らは手を振って応える。
「空いてるから二人ともこっちおいでよ!」
クロスが同じテーブルの空いた席を指差しながら二人を呼ぶ。
「おう、俺ら先に飯買ってくるから待っててくれ!」
「うん、わかった!」
そして二人を見送り、僕は再び話し始めた。
「で…二人の事だから何?」
「あ、えっと…ほら、普段忙しいだろうから来ないんじゃないかなって…?」
確かにあの二人は大抵僕らを二人きりにする為に、忙しいという言い訳をしてくれているが…
「そうかなぁ?多分大丈夫だと思うけど…」
「ホントに…?」
「まぁ、確証はないけど…」
その時、ちょうど二人が昼食を受け取って戻ってきた。
「お待たせ、お二人さん」
「あ、ちょうどいいところに…!放課後さ、四人で帰りに寄り道しないかって話なんだけど二人はどう?」
「あー…久々なんだから二人で行ってきたらどうだ?俺はちょっと顧問と話があるしさ…」
「そうそう。僕も朝、トモと話してた内容まだ終わってないしさ…」
「そっかぁ、ちょっと残念…でも、次は一緒だからね!」
「ああ、勿論!」
笑顔を見せるトライ。
「よし、約束ね!」
それにクロスも笑いかけ、こっちに視線を向けたので僕も思わず笑い返す。
「そういえばレクくんたちは、最近何か変わった事はあった?」
「僕は特には無いかなぁ、強いて言えば新聞部が忙しいくらい。特にトモが最近かなりお熱でさ…」
「あはは、相変わらず大変そうだね…トライくんは?」
「俺も部活以外じゃ特に目立った事はないかな…ってそういえば最近部活で面白い事があってさ、聞いてくれるか?」
「うん、なになに?」
クロスは興味津々といった様子で食い付くが、僕は何度も聞いた話だろうと思ってスルーした。
「一回部員が全然居ない時があってさ、まぁ偶然色んな人が違う用事で同時に部活休んだんだけどさ…」
「へぇ、そんな事あったんだ…?」
「それで仕方なく準備の為に助っ人で呼んだカズってやつがさ、途中の休憩時間で走り高跳びのバーを跳んで…結構高いのを跳んだんだよ。陸上の経験あるかって聞いたらほとんど無いらしくて部活もバスケ部らしいんだよな、陸上部に来ないかって誘ったんだけど断られて…いやぁ、結構勿体ないと思うんだけどなぁ」
「もう、トライったらその話何回もするよね。そろそろ僕もその内容覚えそうだよ?」
「あっ、マルくんがお見舞いで言ってた話ってこれのこと?」
やっぱりそうだった、僕がトライが喋るのに合わせて喋れるくらいには聞いた話だ。
「いや、普通にそいつの記録が陸上部並なんだって…ホントその時はびっくりしたよ」
まあとても楽しそうに話してるからそんなに憎めないんだけどね。
ふと自分のスマホに目を落として、僕は思わず声を上げる。
「あっ、もうこんな時間…あと20分くらい。僕たち次移動教室だし戻らなきゃだよ」
「ホントに?じゃあレクくんトライくんごめんね、またね!」
僕らは食器を下げようと一緒に立ち上がった。
「ん、じゃあね。マル、クロス!」
「うん、また!」
そして次の教室へ、僕らは二人並んで向かっていった。




