04 記憶喪失になった貴方の良い所
タイトルそのままの話。
僕は記憶喪失というやつになってしまったようだ。
だけど心配はいらない。
僕には記憶を失う前から付き合っている、とてもできた彼女がいるから。
忘れている事、思い出せない事はすぐ教えてくれるし、よく気が付く。
彼女程できた人間は、他にいやしない。
僕なんかにはもったいないくらいだ。
でも、僕には何の取りえもない。今までだって、至って平凡な人生を送って来たらしい。
こんな僕が、彼女につりあうのかたまに不安になる。
彼女は何で僕を好きになったんだろう。
僕は聞いてみた。
すると彼女は笑顔で僕にこう言った。
「貴方のそういう控えめな所が好き、と。
「貴方の一歩引いた身の置き方が好き」そして。
「貴方のその、慎重な考え方が好き」あと。
「貴方のその、謙虚な性格が好き」と。
「欠点はね。欠点だって思うから。欠点になってしまうのよ」
「そういう考え方、した事なかったた」
「貴方が私との時間を忘れてしまっても、それは悲しい事なんかじゃない。もう一度恋をして、もう一度好きになって、もう一度お互いの事を知っていける。それって素敵な事じゃない」
彼女は「考え方なの」、と言った。
その通りなのかもしれない。
何か不幸があった時、なくなってしまったもの、きずついてしまったもの、ばかりに目がいってしまうけど。
きっと、そこから初めていける事も、積み重ねていける事もあるのだ。