1 開始数秒で終わったミミック生活
俺が自我を持ったのは数日前だ。
ミミックとしてこの部屋に配置されてから数年、誰一人として開けに来る者はいなかったが、ここで構えているうちに経験値を得て進化したらしい。
特にスキルもなく、バカみたいに高いステータスで相手に噛み付くだけだったが、今じゃ少し魔法も使える。
とはいっても、戦ったことはないんだけどな。実は俺はこの台座から動くことができないのだ。
固定シンボルやめろや。
ああ、戦ってみたいなぁ。
早く誰か来ないかなぁ。
それから数日が経ったとき、俺の願いが叶ったのだろうか、コツコツと足音がひとつ聞こえてくる。
お、この音は人間だな?
ずっとこの瞬間を待っていたのだ。
数年ものあいだ、ここにたどり着いた者は一人としていなかった。きっと屈強な男戦士が近付いているに違いない。
ふふふ……、ようやくこの力を解放できるのだな……。
だが思いの外、視界に現れた人間はヒョロリとした女だった。
とても強そうには見えない。
期待はずれかと思ってステータスを覗いてみた瞬間、俺は驚愕した。
ステータス自体は俺の方が高いかもしれないが、目に入るのはそのスキルの数。
きっと数百はあるだろう。
勝てる気がしない。
生まれて初めて感じていた高揚は、すぐに恐怖へと変わった。
俺はここで死ぬのかな。
だけど、何年も待ち望んだ、最初で最後の戦いだ。全力で戦ってみせる!
そう意気込んで、俺は開けられたらすぐ 飛びかかれるように準備をする。
俺の目の前にその女が立った時、ボソリとこう言った。
「ふむ、これはミミックだな。あの娘のお土産に丁度いいか。」
ええっ!?
何故バレた。
殺気は出していなかったはずだし、魔力もなにも……。
あ。
女が着ている銀色の鎧にキラリと映った俺の姿は、赤と黒で禍々しく混沌とした配色をしていた。
いけねええええ、やっちまった!
見た目を偽装するの忘れてた。
こんなの宝箱にみえねえよ。
そりゃあ何年もずっと一人で過ごしてきたわけだし、宝箱に似せる必要なんて無かったし〜。
そんなことを思っているうちに、目の前の女は俺の身体へと手をのばす。
頼むから開けてくれ!
俺の声が女に届くことはない。
お願いします……。
せめて死ぬ前に戦わせてください……。
カタカタと震える俺をよそに、ついに女の手が俺に触れた。
そしてそのまま蓋を開けることはなく、俺の身体をサラサラと撫で始めた。
やめろ、ちょ、そんなとこ触るな!
女の手は止まらない。
「よし、開けない限りは害のないミミックのようだな。これなら安全だ。」
女は安全を確認していたようだ。
くそっ、このままじゃ攻撃もなにもできないじゃないか。
すると次の瞬間。
ひゃっ……。
……優しく抱きかかえられた。
悪くないな、これ。
変装し忘れたミミックの外見は、ドラ○エの混沌の箱をイメージしていただけると嬉しいです。




