表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

入学式、或いは無駄な時間


もう……げんかいぃ






 なんて事があった所為で出ざるを得ない状況になった訳だ。

ちなみに今はカリキュラム説明が終わった所。



「続いて、新任の先生方ご紹介です」


 相変わらず秘書っぽいね。

確かラクタの秘書兼任の護衛だったか。

キビキビしてて硬いというか、厳しいというか。

はぁ、あの子も昔はお転婆令嬢だったのにね〜。


「新任の先生方は壇上にお願いします」


 チラリとラクタを見る。

行かないと減給…と目が告げている。

けっ、行きますよ…行けばいいんでしょ…行けば。


 位置的に近い順……つまりは真っ先に壇に上がった。

上がる際には校章と国旗に一礼、やる気と礼節は別物だ。

ただ……礼の心は一切持ち合わせていないけど……。


「王宮騎士団より剣技の講師として参ったドイード=ヴィスカウント=フラビネル

 これから諸君等を厳しく鍛えていく所存である」


 で、一番最後に上がったモシャモシャ筋肉さんからの紹介。

ご丁寧に爵位と家名を名乗っちゃって……しかも王宮から…エリート様かよ!


 余談だが、名乗りの作法は名前、爵位、家名(姓)の順。

ちなみに爵位の順は


ーーー大公 王位継承権のない王族 アークデューク

ーーー公爵 王位継承権のある王族 デューク

ーーー侯爵 よく王族の降嫁先になる マークウィス

ーーー辺境伯 遠方を治めるので伯爵より上 マーグレイヴ

ーーー伯爵 旧家が多く領地によって伯と辺境伯を行き来する アウル

ーーー伯 ここから宮仕えが多くなる カウント

ーーー副伯 上記三つの分家が多い ヴィスカウント

ーーー子爵 地方都市で一番多い ヴィスコント

ーーー男爵 ほぼ貧乏貴族 バロン

ーーー准男爵 そろそろ没落しそう バロネット

ーーー勲功爵 一代限りの貴族、平民の手柄を讃えるもの ホナー

ーーー勲爵士 大きな手柄を立てた貴族、一代限りで褒章のようなもの ヴァン

ーーー騎士 領地を持たない貴族、武人以外もいる 無し



 つまり、この筋肉はそこそこ中堅貴族って事か。


「宮廷魔導研究所より派遣されましたフレニア=バロン=トルイです、以前は

 魔導力学を専攻しておりました……どうぞよろしく」


 今度は打って変わって幸薄そうなメガネ美女。

礼装してるけど注意深く観察すればサイズが合ってないのは一目瞭然。

宮廷から……追い出されたんだろうな………男爵だけど……実はかなり極貧かも

………優しくしよ…うん。


「儂はモドフスク=ゼンゲル、ゼンゲル商会の元会長じゃ

 そこの総代殿のお声掛けで隠居前に引っ張り出された…年寄りじゃからと気を

 抜くな小童供にはまだまだ遅れはとらんぞ」


 お隣で凄いオーラをムンムンさせていたご老人。

実は凄い人なんだなー……ゼンゲル商会は国内トップシェアを誇り、食品の取り

扱いにかけては右に出るものは皆無に等しい。


 ともすれば、財政界のかなり上位に位置する大者。

よくもまあこんあ化け物を引っ張ってきたなあ……ラクタもやるじゃないか。


「あー…カノンだ…平民上がりで姓は持ってない、数年前までを冒険者をやってた

 ………以上」


 ……以上、備考は特にない。

別に詳しく言ってもいいけど、誰も信用しないし……。

つか、言ったら面倒だし……。


 とりあえずやる事はやったのでさっさと壇上から降りる事にした。

礼はして降りる……一方通行なので壇を横切る形になるが至極どうでもいい。

ま、つったか席に戻った所為で全員が全員席に着いたのには少々驚いたが。

なにぶんがの強そうな連中だ。


「ゼンゲル新任教諭が仰った通り、今年度の講師の先生方は私が直接出向いて

 交渉にあたらせて頂きました」


 一通りの説明が終わった所でラクタ口を挟む。

さっきのテキトー説明のお陰でかなり騒ついたから、その収拾を図る腹づもり

なのには違いない。


「その技術、実力は共に並び立つ者がいない程優れています」


 ご大層に箔をつけてくれちゃって………。

そんな事してもやる気は出しませんよ。


「きっと、諸君等の大きな糧となる事でしょう……間に失礼」


 糧ね……その後は一体どうなるんだか……。

テメェの理想論は教育者としては一流かもな。


「おほん、これにて新任の先生方のご紹介を終了とします」


 おお、秘書ちゃんナイスな締め。

やっぱりこっちが優秀さじゃあ上手なだけある。


「最後に当学園総代、ラクタ=デューク=メロヴィングよりお話があります」


 正直思うけど、何回目だ……。

今日だけで一時間以上は壇上にいないか?

無駄の体現者にでもなりたいのかよ……。


「諸君等は今日この日より学徒となる」


ーーああそうだ、青春が始まるな。


「ここは賢者の学び舎、賢者特区所属の第一魔導学園」


ーー国家最難関、留学生規模もトップ。


「最難関の選抜の末、辿り着いた諸君等には最高峰の学びを享受する権利がある」


ーー同時にあらゆる苦が伴い、必要ないしがらみがつきまとう。


「その類い稀なる才覚や弛まぬ努力がここで発揮される事を切に願っている」


ーーそして誤ればその後の人生を棒に振れてしまう。


「最後になるが、この学園では一切諸君等の身分を考慮しない」


ーー理由は簡単、責任逃れだ。


「特別を望むのであれば実力を示すといい…門戸は狭い故、諸君等の活躍には

 十二分に期待している」


ーー活躍だけを……な。


「………これから三年間、しっかりと学び給え」


 合理的主義者め。


「以上で私の挨拶を終了とする」


 だからお前はいつまで経ってもへっぽこラクタなんだよ。










 気分が悪い………だから出たくなかったんだ。











がんばる



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ