一章 虚弱体質村人幼児がスライムに出くわして死にかけた後、魔法少女をゲットする話26 - |有紗《ありさ》 VS グリフィン
一章 虚弱体質村人幼児がスライムに出くわして死にかけた後、魔法少女をゲットする話26 - 有紗 VS グリフィン
というのも、有紗はグリフィンではなく俺の動きを見ていたからだ。
俺が離れるのを待ちながらグリフィンと闘っているように俺の目には見えていた。
俺がアクセスポイントの外へと出た辺りだった。
有紗の動きが変化する。
金色の矢を放つことをやめ、グリフィンを回避することに専念し始めた。
だが矢をつがえることをやめたわけではない。
回避しながら空中から取り出した金色の矢を、次々と金色の弓につがえていく。
つがえた矢は以前の矢と一つになり、その輝きを徐々に増していく。
そして、まばゆく正視するのもつらいほどの輝きとなった時、有紗の動きが止まった。
それを見たグリフィンは、ここぞとばかりに大きな翼を一振りし、一気に止めを刺そうと間合いをつめてくる。
この時、有紗のつがえた矢はグリフィンではなく空に向けられていた。
つがえた矢を放つと、襲いかかってくるグリフィンの真上でまばゆい光を放つ金色の矢は無数に分裂を始める。
そこから真下に向かって、金色の矢の雨が降り注ぎ初めた。
それが、グリフィンの直上から降り注いだのである。
頭と背中、そして大気を掴むための翼が無数の金色の矢に貫かれて、ズタズタに引き裂かれる。
グリフィンは飛行することが不可能となり、地上へと落下した。
タフさを見せながらふらふらと立ち上がり、ギャーンとグリフィンが鳴く。
ひどく苦しげな声であった。
だが、それに対しても容赦なく金色の矢の雨が降り注ぎ、ついにはグリフィンは膝を屈する。
金色の矢の雨の中で、グリフィンは血反吐を吐きながら、さらに苦しげな声でギャーンと鳴いた。
その後、グリフィンの巨体が地面に横倒しになり、その衝撃が俺の体を揺らしす。
倒れたグリフィンに向かって、魔法陣の上に立つ有紗が上空からつがえていた金色の矢を放つ。
グリフィンの心臓を貫いた矢は、体の中で弾けて胸部を粉砕した。
最後にグリフィンは一声鳴こうとしたが、声は聞こえなかった。
グリフィンの大鷲の嘴から大量の血が吐き出され、それと一緒に舌がだらしなく垂れてきた。
声なき鳴き声がグリフィンの断末魔となり、もう二度と動くことはなかった。
魔法少女有紗は、グリフィンに勝利した。
俺はそのグリフィンの姿を見ながら、地面にへたりこんでいた。
何をしたというわけではないのだが、今の俺にはただ逃げ出すだけでもかなりの負担になっていたのだ。
厄介なことだが、それが今の俺の現実であった。
そして、もう一つの現実がやってくる。
金色の光を見の纏った魔法少女有紗は、俺の目の前に来ると片膝をついて跪き頭を垂れた。
「マスターの敵を排除いたしました。私有紗はマスターに絶対の忠誠を誓い、どのようなご命令であっても従います。もちろん、マスターの欲望を叶えるために全力でお尽くしいたします」
これが、俺に話しかけてきた有紗の二度目の言葉であった。
初めての言葉は思い出せないし、思い出す必要もないだろう。簡単に想像がつくからである。
俺は代わりにミコのときのことを思い、違和感を覚えている。
今の時点で、それがなんなのかはっきりと指摘できるわけではないが、何かが違った。
だが、その前に確認すべきことがある。
「自分が呼び出されるように何かやったか?」
ミコを呼び出そうとしたとき、明らかに何かがそれを阻止した。
それで、俺はグリフィンが目の前に迫っている危険な状況で、あえてミコではなく有紗のカプセルを呼び出したのだ。
「はい。あの敵相手では、自分でなくてはマスターをお守りできないと判断いたしました」
この返答を聞いて、俺が感じている違和感の正体がなんとなく分かってくる。
「ということは、俺の状況が分かっていたのか? もちろん、自分自身の状況も?」
ということになる。
だが、この質問は違和感の本質ではない。
「はい、マスター。私はマスターのことは全て承知しております」
なるほど、ミコと違いカプセルを取り出していない時でも、おそらく俺を通して常に状況は把握できているということなのだろう。
「俺が呼び出した後、君の心も体も含めて絶対に逆らうことの出来ない完全な支配下に置かれるのだということは分かっていて呼び出されたということか?」
この質問こそが本質である。
「私はミコを囚えた時のことも、ミコに何が起こったのかも承知しております。その時、私はすでに全てを受け入れる決意をしておりました。私の生涯をかけて、マスターをお守りしマスターの欲望のために働く忠実な駒となることを。その決意をマスターの力で不動のものとして頂いた。私はとてつもない感謝の念と忠実な駒となれた喜びに満ちております」
 




