一章 虚弱体質村人幼児がスライムに出くわして死にかけた後、魔法少女をゲットする話17 - アップデートされる心
一章 虚弱体質村人幼児がスライムに出くわして死にかけた後、魔法少女をゲットする話17 - アップデートされる心
次に、ミコの意識はある。これが二点目。
俺の命令がなくては、何も実行しようとは考えない。これが最後に分かったこと。
そこから導かれるのは、ミコは今意識はあるが意思のない状態ということになる。
ミコが自分で行動するためには、意識ではなく意思を与えてやればいいのだ。
早い話し命令だ。
ただし、そのための条件がある。
具体的な命令ではないにしても、実行可能な命令をする必要がある。
それは一番最初に出した、動けという命令は、あまりに範囲が広すぎて実行することができなかったことから分かった。
だから、なんの反応もなかったのである。
それを踏まえた上で、俺は改めて命令を出してみることにする。
「俺を守護し、俺のためにすべての欲求を満たすことを唯一の喜びとする魔法戦士となれ」
俺は大まかではあるが、けっこう細かく注文を入れた命令をする。
いかなることがあっても、絶対に裏切ることをしない。そんな魔法戦士を思い浮かべた命令であった。
もちろん、この命令が受け付けられるのかは見守るしかない。
命令をウケたミコは、直立したまま動かなかった。
直接的な命令をされた時には、ノンタイムで反応したのに今度の命令では反応がみられない。
やはり、こういった命令は受け付けられないのだろうか……と思い別な命令に切り替えようとした時であった。
ミコは無表情のまま、顔だけを俺の方へと向ける。
一体何が起こっているか俺には判断がつかず、俺は様子を見ていた。
すると。
「今のご命令には人格のアップデートが必要となります。マスターによる承認をしてください」
反応はあった。
あったが、ひどくシステマチックな反応であった。
さすがにこれは、ミコの意思によるものでないことはすぐにわかる。
言っていることの意味は半分ほどしかわからないが。
ならば聞いてみるだけのことだ。
「承認の方法は?」
単純な質問だが、これなら間違えようがない。
「マスターの生体認証が必要です。いったんわたしをカプセル内に回収して、わたしの個体名を登録することで承認されアップデートが開始されます」
かなり具体的にミコ……というか、ミコを操っている何かが答えを返してきた。
俺が今まで欲しくてもまったく手に入らなかった情報である。
それを、ここまで具体的に説明してくれるとは正直思っていなかった。
それはいいとして、俺が使ったカプセルに関する情報は、カプセルを使ってゲットした魔法少女をインターフェイスにすることで引き出すことが可能だということである。
これで、カプセルに関する問題が一気に解決することになる。
もっとも、どこまでの質問に答えてくれるかどうかは、実際に情報を引き出してみないことにはなんとも言えないが。
それはともかく、今は目の前の問題を処理することにする。
もうかなりの時間、日本に滞在している。
いつ、元の世界に呼び戻されても不思議ではない。
まずは、魔法少女ミコを俺の手の中に呼び戻す。
やり方はすでに調べてある。
左手を閉じるだけだ。
実際にやると、カプセルの時とは違い、かなり派手な音を立ててミコの姿が消えた。
すぐに俺は左の掌を開き、そこにミコのカプセルを呼び出す。
中にはフルヌードのミコがいたが、カプセルの中で意識を失っていた。
それを確認できたのは一瞬だけで、カプセルは複雑に混じり合った、虹色に輝き初める。
輝いていたのは五分ほどだろうか。その間、中の様子はまったく見ることはできない。
五分が過ぎてようやく、透明なカプセルに戻る。
すると、カプセルの中でミコがゆっくりと起き上がってきた。
声は聞こえないが、反応は同じで恥ずかしそうに両手で自分の体を隠そうとしている。
見た限りでは、本当にアップデートが出来ているか確認できない。
ただ見た限りの変化としては、どうやら俺を睨んでいるような気がする。
俺はそれを確かめるため、さっきと同じ方法で質問し確認してみることにする。
「カプセルから開放された時、何があったのか覚えているのか?」
俺の質問に対して、俺のことを睨んだままゆっくりと頷いた。
やはり、記憶が無くなっているわけではないようだ。
「俺が言ったことで、何か変化を感じるか?」
この質問には2つの意味がある。
一つは、アップデート後の変化。もう一つは、俺の命令をどう受け取ったのかということだ。
一つは首の動きで、もう一つは、ミコの反応で見て取ることが可能だ。
ミコは少しの間俺をじっと睨みつけた後、首を横に振る。
これで必要な確認は出来た。
どうやら、今この時点ではアップデートにおける変化は起きていないようである。
そして、ミコは自分の身が自由にならないばかりか、俺の絶対的な支配下に置かれようとしていることに対して不満を持っている。
当然と言えば当然だが。
だが、それでも俺にはこれしかない。
足一本失うことでかろうじて生き延びることが出来た。