一章 虚弱体質村人幼児がスライムに出くわして死にかけた後、魔法少女をゲットする話13 - 変身
一章 虚弱体質村人幼児がスライムに出くわして死にかけた後、魔法少女をゲットする話13 - 変身
「それでは、もう一つ教えて欲しい。その力、どうやって手に入れたのかを……」
さっきの質問と、その後の脅迫はこの質問のためにおこなった。
俺に口止めをしたことと、終始マルカ・ロウゼのことを話したがらなかったこと。それらを考えると、普通に聞いたところでこの質問に答えるとは思えなかった。
案の定、その質問に対してミコは苦渋の質問を浮かべている。
少し考えれば分かることだが、話したがらない理由は、変身するための力を彼女たちに与えた何者かが口止めをしているのだ。
だから、正確に言えば話したがらないというより、話すことができない。
そう考えた方が良いだろう。
俺が黙ってミコの様子を見ていると、ポケットからスマートフォンを取り出した。
俺がこの世界での人生が終わってから五年が経つはずだが、あまり変わっているようには見えない。
ミコは黙ったままスマートフォンを操作して、俺に画面を見せる。
一枚の写真が表示されている。
俺の目には、ハムスターのように見える。
もふもふのやつだ。
「これは?」
俺は確認するようにミコに尋ねる。
すると。
「ケンゴ君が言ってたやつよ。あたし達は、これと契約してマルカ・ロウゼになったの」
つぶらで何処見ているのかよく分からない瞳。もふもふ感たっぷりで、黒と白と茶色の毛並み。どこからどう見てもハムスターそのものにしかみえないのだが、からかわれているわけではないようだ。
ミコは終始真剣であった。
まぁ、見かけなどどうでもいい。肝心なのは契約の内容である。
「詳しく教えて欲しい」
俺は遠慮なく踏み込んでいく。
「それは……でも……」
やはり、まだ迷っているようだ。
「もうここまで来たら、最後まで話してもあまり変わらないんじゃないか?」
ハードルを下げるようなセリフを口にして、俺の質問への回答を促す。
「……そう……わかった。これの名前はロッカ。ロッカはリギンと闘うための戦士を探していたの。マルカ・ロウゼはみんなリギンに襲われた女の子達。もちろんあたしも、リギンに襲われた。体の半分をリギンに喰われて死にかけていたあたしの前に、ロッカが現れて言ったの……」
そこでミコは一端話しを止めた。
決心をしたと言っても、やはり抵抗は残っているということだ。
俺はすでになんと言ったのか、おおよそ予測はついている。
何しろ中身はおっさんなのだ、その程度のことはわかる。
「自分の命と引き換えに、ロッカと契約をした、ということだな?」
俺はさらにハードルを下げて後押しするために、自分の推測を伝えておく。
「そう……でも、それだけではなかった。あの時、父と母と弟。あたしを含めて、家族四人が家に居た。寝ている家族が喰われている時、あたしはめを覚まして……逃げた。家族を見捨てて、一人で逃げたの。結局追いつかれて、あたしも喰われてしまったけど。……だから、あたしは復讐する。やつらを殲滅するまで、闘い続けるの」
俺はそれで納得した。
有紗とリギンの闘いの時、有紗は俺のことなど見てはいなかった。
リギンから誰かを守るための闘いではない。俺にはそう感じられたのだ。
つまり有紗に同じ質問をしたなら、ミコの話してくれたことと同様の内容を話してくれるだろう。
ロッカは、わざわざそういった少女を見つけては魔法少女にしているということだ。
どうにも胡散臭いハムスターである。
「ロッカとはどうすれば会える?」
俺は、さらに質問を深めていく。
すると。
「ダメよ。さすがにケンゴくんにこんな話しをしたことがわかったら、どんなペナルティがあるかもわからないし……。それに、用がある時にはかならず向こうから姿を現すの。こちらから呼び出すことはできない」
ミコは無表情を装ってはいるが、ロッカのことを恐れていることが感じられる。
ロッカに会えば、もっと詳しい情報を引き出せるかと思ったのだが、ここまでヤバイ感じのやつだと下手に刺激しない方がいい気がしてきた。
なんにせよ、ある程度の情報は揃った。
次はいよいよ、検証である。
あの時の状況を思い出しながら、起こったことを試してみるのだ。
だが、そのためにはどうしても必要なことがあった。
俺は右手に意識を集中してみる。
検証するためには、カプセルがいる。
いままで、カプセルはいつの間にか手の中に出現した。
それを意識して出現させなくてはならない。
やったことはないので、果たしてそんなことができるのかわからない。
で、やってみた。
実際やってみると、ひどく簡単だった。
カプセルのことを思い浮かべて、それっぽい大きさに掌を広げるとそこに硬質の球体が現れた。
今俺の手にはあのカプセルが握られている。
これで、検証をすることができる。
体を動かすのは、かなり辛かったが、それでも俺は無理やり起き上がろうとする。