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第29話 さらば、ダイジャスの街

 あの戦いから2週間が経って、ユウはダイジャスの臨時拠点のベットの上で休養中である。 


 「うん!! 出来たな!!」


 「…………あんたの体はどうなってるのよ」


 「うん? 何が?」


 クララが何とも言えない表情で、色々な物を作っているユウの姿を見て呆れている。あの激戦の後、ダイジャスの医者がユウの体を診断した時は、至る所で骨が折れており、特に酷かったのは腹部辺りの臓器は滅茶苦茶の事になっていて、生きてるのも不思議なぐらいの重傷であった。更に医者からは、完全回復する見込みはないと言われて、ある程度治るまでに半年以上必要と診断されたのである。


 だが、1週間経った現在はベットの上で回復薬を作るまでにユウは回復している。医者が経過観察で来た時に、その光景を見て驚きの余り何度も何度もユウの体を調べる始末である。しかし、認めるしかない程に驚異的な回復して、医者は化け物を見る様な視線を向けながら帰っていった。まあ、あれだけの怪我を折ったはずなのに、驚異的な回復を見せているので化け物である事は間違いないが悲しい気持ちになるユウであった。


 「この異常な回復力よ」


 「あ~~、まあ、普通の人とは鍛え方が違うからね♪」


 「………いや 、そんな訳ないでしょ。まったく、どんな鍛え方したらこんな異常な回復力が身に付くか教えて欲しいわよ!!」


 クララの拳がユウの頭に飛んで、重たいダメージがユウの体を突き抜ける。

 

 何故!! 殴るの!! 一応、怪我人だよ!!


 「痛いな~もぉ!! もお、鍛え方の秘密を教えないぞ!!」


 「結構よ。まず、スキルやら体の作りが違うから無理よ」


 「ですよね♪」


 まあ、クララが言うようにスキルや体の作りが違い過ぎる。スキルは個人によって違うのは当たり前として、クララは剣術をメインにしているので、剣術に合った筋肉や柔軟性を身に付けている。しかし、飛鳥流は素手で戦う事をメインに置いているので、既に、剣術に合った体をしているクララに教えても効果があるか分からない。一応、飛鳥流は剣術も組み込まれているので鍛える方法はあるが、本格的な剣術ではないので役に立つか分からないのが本音である。


 「二人の時間を邪魔して悪いけど、少しいいかしら?」


 「『うわ!!』」


  ユウとクララは驚きの声を上げながらドアの方を見ると、マリアナさんがニヤニヤと笑いながらこっちを見ている。ユウの索敵スキルやドアの開く音やマリアナさんの気配が全く反応がなかった。やはり、冒険者ギルドのトップを勤めるだけあって、索敵スキルを無効にしたり、気配を隠す事はお手の物らしい。


 「もお!! マリアナ様は、普通に入って来れないですか?」


 「普通に入ろうとしたけど、いい雰囲気だったから覗き見してたのよ♪」


 マリアナさん……タチが悪いな。


 クララは、マリアナさんに覗き見の事やスライムの祠での出来事に付いて怒濤の様に文句を言っているが、ハイハイと聞き流してユウとクララに歩み寄って来る。


 「急だけど、今からレオン王国に送るから準備してね♪」


 余りの急な無茶ぶりに、ユウとクララは言葉を失ってしまう。


 「イヤね~。マックス君やあの三姉妹みたいな反応しないでよ♪もぉ、そんな反応されたら恥ずかしいわ♪」


 二人が固まっている一方で、マリアナは嬉しそうに体をモジモジ動かしている。


 ……そんな訳ねよ!!


 マリアナさんのあからさまのボケにツコミを入れたくなるのが、一国を一人で壊滅する事が出来るマリアナさんには、恐くて出来ない二人である。


 そんなこんなで、慌ただしく仕度の準備を始めるクララ達を他所に、怪我人のユウはベットの上でのんびりと回復薬を調合していると。


 「あんたも動きなさいよ!!」 


 痛い痛い!! クララさん、お願いだからグリグリを止めて下さい!!


 クララはユウの頭を拳と拳でロックして、頭蓋から嫌な音が響き渡る程に、グリグリと締め上げている。普通の人間なら確実に頭蓋骨が粉々に砕けるレベルである。

 

 ユウは、痛みがある体を渋々と起こして、皆と一緒に出発の準備を手伝うのであった。




 ユウ達一行は、マリアナさんと一緒にダイジャスの街が見えなくなる程の郊外にいて、目的地のレオン王国とは方向が違う人通りがない獣道の様な場所いる。


 「この辺でいいかしらね」


 足を急に止めて一呼吸すると、巨大な魔力発しながら呪文を唱え始める。すると、数ヶ所の地面から炎が立ち上ぼり、生きている様に動き出して魔方陣を描き始める。


 「出でよ!!」


 マリアナさんは力強く叫ぶと、魔方陣の炎が唸りを上げて形を作り始める。炎の勢いが収まると深紅の巨大なドラゴンが現れていた。


 「ど、どっ、ドラゴン!?」


 ジュナは、深紅の巨大なドラゴンを見て腰を抜かしている。エリーとマイに至っては思考が停止して動かないでいる。しかし、クララやマックスは驚く様子もなく立っている。


 「カルラ様、お久しぶりです」


 「お久しぶりです」


 「クララの嬢ちゃん、久し振りでやすね。あと、この前の小僧も一緒でやすか」


 どうやら、クララとマックスは顔を知っている様で普通に会話している。しかし、面白いしゃべり方をするドラゴンだな。 


 「で、姉貴、何か用でやすかい?」

 

 「カルラ、レオン王国に連れて行って♪」


 「はぁ~~ 姉貴、またですやかい。」


 「お願い~♪」


 「まあ、主人の命令なので仕方ないでやすね」


 カルラと呼ばれたドラゴンは、マリアナのさんが使役している様で、溜め息を付きながらもレオン王国に送る事を快諾してくれた。


 マリアナさんは軽くジャンプしてカルラの背中に乗るが、ジュナ達は流石にそうはいかない。それを察してカルラが登りやすい様に体を低く伏せてく足場も作ってくる。お掛けでジュナ達は悪戦苦闘しながらも背中に到達することが出来た。勿論、クララ、マックスはマリアナさんの様には行かないが軽やかに背中の上に登って行く。しかし、ユウは怪我の影響でそうも行かない。痛みを押しながらもなんとか登ることに成功する。


 「姉貴、全員が乗りやしたか?そろそろ出発しやすよ」


 「えぇ、レオン王国まで宜しくね♪」


 「へぃ」


 カルラは、掛け声の後に両方の翼を力強く羽ばたかせながら体を浮かせ始める。そして、レオン王国の方に向かって進み出す。


 おぉーー!!ドラゴンの背中で見る景色は綺麗だな。それにしても、ドラゴンの背中に乗って空を飛ぶとは夢にも思わなかったぜ。しかし、凄い勢いで景色が進んでるけど余り風の抵抗を感じないのは気のせいだろうか?


 マリアナさんに聞いてみると、どうやら、カルルの魔法でユウ達を守ってくれてるそうだ。もし、これがなければ乗っているのが困難な程の風を感じるらしい。


 「姉貴、この小僧が例の奴ですかい?」


 「そうよ♪なかなか見所があるでしょ?」


 「確かに巨大な魔力を感じやすな。……………そして、身に纏うオーラもかなりの武人でありやすな」


 「負けはしないと思うけど、あなたでも手こずると思うわよ♪」


 「ほぉー、一度、手合わせしたいでやすね」


 感心する様な声を上げて、とんでもない事を言い出すカルラである。


 ユウは、チラッと鑑定スキルを使ってみる。


 ★ステータス★


 炎竜の王 カルラ

 討伐ランク S


 スキル

 龍炎 (炎の威力が上がる)

 ???

 ??? 

 ???

 ???


 

 わぉ。討伐ランクがSとかヤバイでしょ。スライムの祠で会ったミノタウロス将軍のタウロと同じ強さかよ。まあ、今の俺では間違いなく勝てない相手だな。それに、一部のスキルが見えないのが、また怖い。


 「カルラ様が思っている程に強くありませんよ。それに、手合わせした所でカルラ様が満足出来るとは思えませんよ」


 「謙遜することはないと思いやすよ。姉貴が認める人物はそういないですからね」


 「……そうですか」

 

 いやーー、認められるのは嬉しいが、カルラみたいな強い奴に目を付けられるのは正直勘弁して欲しいな。もう、討伐ランクSみたいな化け物とど付き合いなんて二度とやりたくない。


 しかし、運命とは上手く行くものではない。これからもユウは、化け物とこれでもかと言うぐらいにど付き合いをする羽目になる。



 そんな会話をしていると地平線から海面が顔を出し始める。そして、進行方向から港町の様な物が見えて来る。


 「そろそろ着きやすよ」


 段々と港町の全容が見えて来た。最初は、小さな港町と思っていたが近付くいて見ると、かなり大きな港街で、大きな城と街の周りを囲む様に城壁がある王都であることが分かった。


 「姉貴、ここでいいでやすか?」


 「ええぇ、ここで良いわよ。カルラ、助かったわ♪」


 「へぃ」


 カルラは少し街から離れた場所にユウ達を降ろす。マリアナさんは、仕事がある様でカルラに乗ってそのままラックスの街に帰るらいし。


 「クララ、ウルファーとマートに宜しく言っといてね。あと、これも宜しくね♪」


 「わかりました。クララ様」


 マリアナさんは鞄から大きな酒瓶を二本取り出してユウに放り渡す。それを上手くキッャチしてラベルを確認すると。「イラクル酒、飲むな!!危険!!火気厳禁!!」と書かれている。


 おい!!飲むな!!危険!!火気厳禁!!ってどんな酒だよ!!その前に……誰がこんな酒飲むんだよ。ヤバイ、誰が飲むのか気になって来た。


 「じゃあね~♪」


 「でわ、元気でな」


 マリアナさんとカルラが別れの挨拶をしながら元来た方角に向かって飛んでいった。


 「さてと、レオン王国の王都である。レオポートに行きましょ」


 「久し振りの故郷だな」


 「レオポートか、楽しみだな」


 「そうですね♪ユウ様」


 「わん」


 ユウとジュナ達は新たな街に心踊らせ。マックスは久し振りの故郷に喜び。何故か分からないがクララは複雑な顔をしている。各々の思いを馳せながら、レオン王国の王都であるレオポートの門に向かって歩き出すのであった。

 





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