第19話 クララとおっちゃん
屋根の上を駆け抜ける人物が一人(お姫様抱っこされている人がもう一人)いる。建物の屋根と屋根の間を飛び越えて城壁の方に向かっている。その姿はまるで忍者の様な動きである。
「ストッーープ ストッーープ 」
「…………」
「止まれって言ってるだろうが!!」
「ぶぇーー!!」
クララはグーでユウの顔をぶん殴る。その拳がユウの顎にクリーンヒットする。
マジで殴るなよな。それにいくら何でもグーで殴る事はないでしょ。それも顎に!!
「クララ何するんだよ。早くこの街を出るんだろう?」
「早く出るけど、私は手ぶらで出るの?」
「なるほど!! なら家に取りに行くのかそれともギルドに?」
「馬鹿ね。ギルドは見張られてるから無理よ。それに、家は昨日の時点でももぬけの殻よ。大きな赤い煙突がある建物に向かって」
「おっ!! あれか!!」
「馬鹿!!あれは違うでしょ!!赤い煙突よ!!黒い煙突ではないからね。右側の大きな赤い煙突よ!!」
クララは『やれやれ』とした表情をしながらユウを目的地へ誘導して行く。1~2分ぐらいで目的地の赤い煙突がある建物の下に到着する。どうやら建物は鍛冶屋の様で薪やら鉄鉱石みたいな物が積まれている。
「おっ!!クララじゃないか?随分と早いな!!」
「誰かのお陰で意外にすんなりと逃げれたからね。」
鍛冶屋のおっちゃんらしき人が現れてクララに話し掛けて来た。おっちゃんと会話しながらクララは横にいるユウをジーと見詰めて来る。その目には『大変だったわ』と言っている様だ。
あのクララさん、俺何かしました?普通に抱き抱えて連れて来ただけですけどね。
「クララ、こいつが例の…………………彼氏か?」
クララはおっちゃんに強烈なボディーブローをぶちかます。ユウが認めるぐらい綺麗なボディーブローである。おっちゃんが、くの字に折れ曲がるぐらい容赦がないブローである。しかし、倒れる事はなく、痛そうにしながらもちゃんと立っている。
「 ごっふ!! 相変…わらず…いいボディーブローだな」
おっちゃん、スゲー!! あんな強烈なボディーブローを喰らっても立ってられるのかよ!!普通なら立てないぞ。
「違うわよ!! それより、早く荷物を持って来てよ。」
「違うのか。ちぇ。面白くないなぁ。 ごっふ!! 」
「は・や・く・して!!」
「はい、はい、はい、ゲッフ・・・ 」
「はい、は一回でよろしい」
クララがまたボディーブローを叩き込む。毎回、ボディーブローを食らっている様子でケロッとして何事もなく荷物を取りに行く。鍛冶屋の奥からクララの荷物を持って来る。その手には、カバンと日本刀を持っている。
おぉぉ。あれって日本刀だよな。この世界にも日本刀ってあるんだな。少し詳しく見てみたいな。
そして、おっちゃんはクララに日本刀を渡す。
「使うかわからないけど、昔みたいに手入れしたからな。」
「ありがとう……………… そろそろ行くわ」
クララは日本刀を受け取ると暗い顔になる。何故かしんみりした雰囲気になっている。それに、昔みたいにって言っていたのが気になるけど、こんな雰囲気なので後で聞く事にする。
「クララ、また帰って来るのか?」
「多分…… 帰ってこないかも。」
「………そうか。でも体には気を付けろよ!!」
おっちゃんは一瞬だけ寂しそうな顔をするがニッコリと明るく笑う。
「………うん」
おっちゃんがユウの所を振り向いてユウの肩に手を置く。そして、ユウに向かって話し掛ける。
「 おい。クララを頼んだぞ」
「あっ。はい!!」
「良く言った!! 彼氏!! ごっふ!!」
おっちゃんが振り返ったらクララがボディーブローを叩き込む。さっさから、クララのボディーブローを食らって大丈夫なのかとユウは心配になって来る。
「じゃあね…… 」
「おう。行ってこい」
クララは背を向けてユウの所に向かって来る。そして、寂しそうな顔をしながらポッツリと言葉を漏らす。
「お待たせ。行こう……」
「あぁ。」
ユウは、さっきみたいにクララをお姫様抱っこして、おっちゃんの前から離れて行く。おっちゃんはユウとクララが見えなくなるまで見送るのであった。
「 また、クララが龍絶丸を抜く姿を見たかったなぁーー。 ……クララ、元気でな」
おっちゃんはポッツリと言葉を漏らして鍛冶屋の奥に消えて行くのであった。
ただいま、ユウとクララの間に気まずい雰囲気が流れている。おっちゃんとの寂しいお別れを見てしまったせいで、ユウは、何て声を掛ければいいか分からないでいる。
よし!! ……この話題だ!!
「なぁ、あのおっちゃんは…………クララの彼氏?」
ゲッフーーーーー!!
クララは、おっちゃんより強くボディーブローを打ち込む。お陰で、ユウはコの字になりそうな勢いで折れ曲がる。そして、クララは凄い剣幕で睨んで来る。
すいません、すいません。ほんまにすいません!!
「ほら、ちゃちゃと行く!!」
はい!! クララ様!!
顔はプンプンと怒りながらも、クララも楽しそうな感じである。そんなほっこりした雰囲気で正門に向かうのであった。




