スーとの、別れ
この惑星の生き物は、すべて生きているんだ。 精一杯楽しみながら生きて、やがて死んでいくんだ。 そう伯父さんに言われたことがある。
それは、ぼくのペット(スー)が死んだときのことだった。
スーを庭に埋めた後、ぼくは近くの公園にやって来ていた。 青色のベンチの上で体育座りになって、膝に目を押し付ける。 だれもいないオレンジ色の公園に、ぼくの声が響く。
「う、うううっ」
しばらくすると、だれかがふらりとやって来た。 ザクザクと砂を踏む音がする。 その音は、真っ直ぐにぼくの方へ近づいてくる。
「ほら、元気だして」
・・・だれ?
「・・・ひっく」
「顔あげて?」
伯父さん?
「・・・ううっ」
安堵したためか、再び涙腺が緩んでしまう。 伯父さんは、ため息をついて話し出した。
「・・・ふう。ねえ、ちょっと聞いてくれる?」
「・・・・・・?」
「この惑星の生き物は、すべて生きているんだ。どんな状況にあってもね」
「・・・・・・ふっ」
何を話したいのだろう?
「だから、いずれ死ぬ」
「・・・・・・」
「でも生きている間、精一杯楽しんでいくんだ」
「・・・スーも?」
「うん。死に顔が安らかだっただろ」
「・・・・・・ぐっ」
確かに穏やかだった。 静かに、まるで今そこで眠っているように、動かなくなってて。 さっきまで忘れていた悲しみが、またじわじわと溢れてくる。
「だからさ?」
頭にトンっと軽い衝撃を感じて、 おそるおそる伯父さんを見上げる。 目があったその瞬間、伯父さんは柔らかく微笑んだ。 さも、楽しそうに。 沈んで涙に濡れていたぼくの心を、包んで温めるように。 それから、ぼーっとしているぼくに向かって、口を静かに開いた。
「精一杯、楽しんで生きていかないか?」
遠いところに住んでいるはずの伯父さんが何故公園にいたのか、何故スーを知っていたのかは、よく覚えていない。 それでも歳をとるたび、笑うたび、この人のことをふと思い出す。 そして、頭の中の伯父さんは笑うんだ。
「精一杯、楽しんで生きていかないか?」
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