新たな旅立ち
いきなりクライマックス!
展開が急ですが、暖かい目で見てください。
いったい、何でこんなことになってしまったんだろう。
故郷の村を出て、いろんな土地を旅して、頼もしい仲間と出会って、様々な敵と戦って、勇者と呼ばれるようになった。
そして、ようやく見つけた魔王城。数多いる敵を退け、倒して、ついに魔王の下に辿り着いた。
魔王の強大さは少なからず知っていた。準備は万端。知識も経験もこれでもかというほど積み重ねてきた。だが、敵は圧倒的に強い。一つの油断が確実に死を招くだろう。それでも俺達は勇気を振り絞り、魔王のいる玉座へと足を踏み出した。
そこまではよかった。
「魔王! お前を倒しに来た!」
「……」
「様々な悪行を為して来たお前の人生、ここで終わらせてもらう! 覚悟しろ!!」
「………………なあ、お前」
「な、なんだ?」
「名はなんて言うんだ?」
「アルクだ!」
「アルク……。そうか、アルクというのか……。良い名だ」
「はぁ?」
そのとき気付いた。魔王がなぜか惚けた顔で俺を見ていることに。
魔王は玉座から離れると、まるで熱に浮かされたように、ふらふらとおぼつかない足取りで俺達に向かって歩いて来た。
俺達は即座に身構える。どんな行動をとろうと、相手は魔王。油断はできない。
俺は剣の切っ先を魔王に向け、構える。だが魔王は、そんな俺達の様子に気付いていないのか、はたまた気付いていてあえて気にしていないのか、千鳥足のまま、俺達に向かってくる。
両者(主に俺と仲間達)の間に緊張が走る。
額から汗が頬を伝って滴り落ちる。
そして、魔王は俺の目の前で足を止めた。
よーく見ると、魔王はものすごくきれいな、……女の子だった。
「アルク、お前独り身か?」
「…………は?」
「結婚しとるのか、しとらんのかと訊いているのだ」
「そんなのお前には関係ないだろう」
「いいから答えろ!!」
「――っ!! ……してねぇよ。つうか俺まだ成人してねぇし」
「そうか……」
「……いや、そんなことはどうでもいい。魔王! 俺達としょう」
「私、お前に一目ぼれしたみたいだ」
「ぶし、…………へ?」
「気持ちが高ぶって抑え切れない。ああっ! これが恋というものなんだな!!」
「いや、ちょっと待て。さっきからお前何言って」
「なあ、アルク」
そいつは剣を持っているのもお構いなしに俺の腕を掴み、自分の方に強引に引き寄せると満面の笑みでこう言った。
「お前のためだったら身も心も全て捧げてやる! 魔王だって止めもていい! だから…………結婚しよう!!」
……こいつ、笑うと結構可愛いな。と、そんなどうでもいいことを頭の隅で思いながら、数秒経ってからその言葉の意味を理解した。
『………………………………えええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーー…………っっっ!!!???』
俺と仲間達の声が重なり共鳴して、魔王城に響き渡った。
以上が、数日前の出来事。
そして現在――――
曖昧な表情をした頼もしい聖職者と、どうでも良さそうな表情の切れ者の魔法剣士と、眠そうな顔をした戦闘好きの格闘家と、怒りと嫉妬で顔を歪めた幼馴染みの魔導師と、……始終満面の笑みを浮かべかなり強引に俺の(未来の)妻になった元(?)魔王と、俺こと勇者の新しい旅が、今、始る。
……思いっきり前途多難だ。
つづく。(続きません!!)
あらかじめ言っておきますが、続ける気はありません。
えっ、別にどうでもいいって?
ですよねー。