クエスト『オーク退治』
「おう、どうした新人。クエストを達成したっていうのに、随分と暗い表情だな」
「先輩……」
「まあ、今回のクエストが冒険者デビューだったお前にとっちゃキツい仕事だったかもなぁ。まあ、あれだけの数のオークどもを退治したんだから、大変だった分に見合うだけの報酬は期待できると思うぜ」
「オーク……」
「……どうした?」
「あの……先輩」
「ん?」
「今回のクエスト……本当に『オーク退治』だったんですか?」
「はぁ? 何言ってんだよお前?」
「だって……あれは……あれは!」
「何だよ? 今度はいきなり怒鳴ったりして」
「あれは……あの人たちは、オークなんかじゃなかった!」
「……」
「僕が聞いていたクエストの内容は、『テンベの森の中にあるオークの巣を襲って、棲んでいるオークどもを駆除する事』だったはずです! でも……あの森の中にあったのは、いたって普通の丸太小屋が集まった集落で……住んでいたのは豚獣人なんかじゃなくて……僕たちと肌の色が違うだけの……普通の人間だった!」
「……新入り」
「あの肌の色は……ジュダイ人でしょう? 数十年前に僕たちニーカ人と争った末に、この国から去っていったっていう……」
「……いいや。あれはオークだよ。知恵遅れの醜い白豚どもだ」
「ガリーファ語を喋る亜人種なんかいる訳がないでしょう! 僕に対して命乞いをしたんですよ? それも、ガリーファ語で……『助けて下さい』『私たちが何をしたというんですか?』って……」
「……」
「ひょ、ひょっとして……僕は、ひ、人を殺して……しまっ……」
「新入りッ!」
「……ッ!」
「……もう一度言うぞ。あいつらは人間じゃねえ。タダのオークだ。たまたまオレたち人間とよく似た姿をした豚どもだ」
「そ、そんなの……」
「いいから、そういう事にしておけ」
「そういう事にしておけって……で、でも、そんな訳には……」
「その方が色々と楽だぞ。――これから長く冒険者をやっていきたいんだったら、な」
「そ、それって、まさか……」
「まあ……とりあえずこれでも食え。腹が減ってるから、そんなくだらねえ事を考えちまうんだよ。目いっぱい食って、ゆっくり休んで疲れを取る事だ」
「……」
「いいな?」
「……はい」
「……よし、それでいい。ほら、お前の為に一番美味いところを分けてやるからよ」
「ありがとうございます……。それじゃ……頂きます」
「おう」
「……先輩」
「ん? なんだ?」
「この肉……あまり食べた事の無い味ですけど……一体、何の肉なんですか?」
「ああ、それか……」
「子豚のモモ肉だよ」




