廊下を歩いてたら狂科学者に襲われた。なお、非常に好みだったとする。
俺が、今日も今日とて、この狂った学園の廊下をブラブラしていたら白衣メガネ女(スリッパの色からして同級生)が、俺の顔を認めるなり飛び掛ってきた。
俺は、その狂女の攻撃をかわしがてら、頭をつかんで壁に思いっきりぶつけようとする。
だが、その寸前に。
「まて、話をしよう。コミュニケーションは、獣であっても相互理解のために行っているはずだ。私の話を聞き給え」
「なんなんだよお前」
形勢が不利になったら、口先で何とかしようとする類か。
しょうじき、わかりやすいので、きらいじゃない。あと、よくよく見れば、顔がちょっとかわいいかった。
なんかいいにおいもした。
変態は、学園標準装備であるが、その変態性をさしひいても俺に『かわいい』と評価させるくらいだから、ひょっとするとちょっとではなく、めっちゃかわいいのかもしれない。
「見ての通り私は科学者でねえ……」
「鉄パイプをブン回してる奴を見て、科学者ってわかるわけなくない?」
「ああ、もちろんこれには非常に合理的な理由があるんだ」
「少なくとも武器にするなら多分に非合理的だと思うんだが」
鉄パイプは限りなく原始的な武器の方に近いだろ。
「当然のことながら、私は科学を狂信している。盲信と言っても良いくらいだ」
「当然って言葉の意味をご存知?」
女は、当然のごとく俺の苦言を無視する(正しい用法)。
「つまり、科学で証明できないものはこの世に存在してはならないと思っている」
さては、かなりバカだな。
「そこで、鉄パイプだ」
ド阿呆だったかもしれない。
「ふう。論理的に説明しないといけないのは疲れるね。私が感覚派の天才であるばかりに」
「ごめん、どこから突っ込んでいいかわからないけど、少なくとも論理的展開はできてないなお前」
女は、チッチッチッと指を振った。
さっきからずっと取り押さえている態勢だから、必然的にこいつと距離が近いわけで、なんかちょっといいにおいするのがムカついてきた。
「良いかね。科学で証明できないものはこの世に存在してはならない。つまり逆説的に言えば、狂信的科学者の端くれとしては、科学で証明できなさそうなものは、消し去っても良いということだよ! つまり、私にたてつく連中は全員非科学的!みなご○しじゃぁぁぁぉぁぁぁぁ!」
「あんたがすげえバカってことだけはよくわかった」
じゃあ、俺に襲いかかってきた理由はなんだよ。
女は、憎々しげに俺を睨んでくる。
「そしてだ。君という存在に私はどうやら一目惚れと言うことをしてしまったようなのだが」
「え。無理です」
「安心したまえ。人の印象は、いわば顔から判断するパーセンテージが7割という。そして、運命の一目惚れとやらも、結局は顔からの印象が占める割合が大きいのも当然のことだよ。つまり、君の心配は不要ということだ。一目惚れは、科学的に説明がつくということだ」
欠片も心配してねえよ、一目惚れの科学的根拠の有無とかは。
「だが。だが!君の顔は全くもって!私の!好みでは!ない!つまり!あり得ないんだ!私が君に一目ぼれするなんてことは!つまり、非科学的!君の顔ごときに、私が一目ぼれするなんてあり得ない!君の顔は!整っていない!!!!!!!!!!」
「とりあえず、顔の形が変わるくらいお前のこと殴っていいか?」
「望むところだよ。なんたって君は科学で証明できない存在──つまり抹殺対象だ!しねええええええ……あ、え、うそ、拳銃はちょっと」
「おら、合理的だろ」
女は叫んだ。
1年後、なんやかんやあって、世界を救ってから、俺と女は付き合った。




