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10月14日 『冬の匂いがする』
朝カーテンを開くと、空はまだ薄暗かった。今日は晴れの予報だったのになと思いながらコーヒーを淹れる。少し肌寒い部屋に、真っ白な湯気が立ち上った。
机について一口すする。あたたかい。胸の辺りの少し凹んでいた部分が、温もりで覆い隠されていく。そんな気がした。
しばらくの間、その一時に身を委ねていると不釣り合いな電子音が聞こえた。洗濯機を先に回しておいたのだった。僕はおもむろに立ち上がり、洗濯物を籠へと移す。外はすっかり明るくなっていた。
窓を開けるとひんやりとした空気が僕の肌を撫で回す。先ほど僕を満たしてくれたコーヒーのぬくもりは、もはや冬空に溶けて消えていった。寒いのは苦手だ。けれどこの空を、何故だか嫌いにはなれない。
部屋の中に戻り、もう一度カップを持ち上げた。生温いコーヒーの水面が揺らいで、僕はふと長い袖口に思いを馳せる。
ああ、冬来たなあ。




