9月20日 『枯れた心の果てに』
突然、何も考えられなくなった。体が動かなくなって、声を出すのさえ億劫だった。けれどやらなければならないことはあって、誰かに催促されると、出したこともない声で叫び声をあげて怒鳴り散らした。
これはとある金曜日のことだった。朝から働きっぱなしで、とにかく自分のことより他人のために動いていたと思う。昼食時間をはるかに過ぎた休憩に入った時には、すでに体力の100%は使い切っていた。ほぼ気力で動いている時に、鏡に映った自分があまりにもやつれた顔をしていることに気がついた。白髪がひどい。自分はこんな風貌をしていたのかと。ショックだった。
美容院に行こう。そう思ってスケジュール帳を開くと、土曜も日曜も予定が入っていた。祝日でさえ私に自由な時間はなくて、とてもじゃないが美容院のための時間は作れそうになかった。
本当はオシャレが好きだった。美容院やネイルアートにも行きたかった。けれど、そんな余裕さえ今の私にはなく、ただ毎日命だけが削れていく。
そこで何かが切れかけたような気がした。
午後からは気力で働いた。体力は既に0なのに、そこから120%を無理やり絞り出したような気分だった。
家に帰ったとてやる事はごまんとあった。しかし、一歩たりとも動けない。私は床に転がったままつぶやいた。
「もう、仕事やめる」
自分のための仕事だった。けれど気がつけばそれは、家族のためのお金に代わり、私の夢などとっくの昔に消え失せた。子どもにお茶をせがまれた時、私の中でプツンと残りの糸が擦り切れた音がした。
私が私でなくなってしまった瞬間。私は動けなくなってしまった。そして週明け、私はまた何もなかった顔をして出勤するのだろう。
切れてしまったものは戻らないのに、まだまだ私を引きずる太い糸が断ち切れない。どこに行けば私になれる?もうここに、私はいないのに。




