表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕の絵本日記  作者: 高冨さご
9月

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/194

9月20日 『枯れた心の果てに』

 突然、何も考えられなくなった。体が動かなくなって、声を出すのさえ億劫だった。けれどやらなければならないことはあって、誰かに催促されると、出したこともない声で叫び声をあげて怒鳴り散らした。


 これはとある金曜日のことだった。朝から働きっぱなしで、とにかく自分のことより他人のために動いていたと思う。昼食時間をはるかに過ぎた休憩に入った時には、すでに体力の100%は使い切っていた。ほぼ気力で動いている時に、鏡に映った自分があまりにもやつれた顔をしていることに気がついた。白髪がひどい。自分はこんな風貌をしていたのかと。ショックだった。


 美容院に行こう。そう思ってスケジュール帳を開くと、土曜も日曜も予定が入っていた。祝日でさえ私に自由な時間はなくて、とてもじゃないが美容院のための時間は作れそうになかった。


 本当はオシャレが好きだった。美容院やネイルアートにも行きたかった。けれど、そんな余裕さえ今の私にはなく、ただ毎日命だけが削れていく。


そこで何かが切れかけたような気がした。


 午後からは気力で働いた。体力は既に0なのに、そこから120%を無理やり絞り出したような気分だった。


 家に帰ったとてやる事はごまんとあった。しかし、一歩たりとも動けない。私は床に転がったままつぶやいた。


「もう、仕事やめる」


自分のための仕事だった。けれど気がつけばそれは、家族のためのお金に代わり、私の夢などとっくの昔に消え失せた。子どもにお茶をせがまれた時、私の中でプツンと残りの糸が擦り切れた音がした。


私が私でなくなってしまった瞬間。私は動けなくなってしまった。そして週明け、私はまた何もなかった顔をして出勤するのだろう。


切れてしまったものは戻らないのに、まだまだ私を引きずる太い糸が断ち切れない。どこに行けば私になれる?もうここに、私はいないのに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ