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第76話 分岐点

「で、どうするよ?」

マンスリーマンションの一室に戻ってきた景隆は柊に意見を求めた。


船井の提案はかなり魅力的であった。

翔動がエッジスフィアの資本を受け、傘下に入る提案であった。


「今回はお前が決めるんだ」

柊の発言には強い意思が感じられた。


「柊は答えが決まっているんだな」

「もちろんだ、でも俺の考えと反対の結論を出してもそれに従うぞ。お前の会社だからな」


景隆は社長であると同時に筆頭株主だ。

経営に関して最終的な決定権を持っている。


「まずは現状を整理するぞ」

「おう」

「まずは資本だな。これからのビジネスで何をやるにしても金がいる。エクイティで調達できるのは大きな利点だ」


エクイティは株主資本を指す。返済義務と利息が発生しないため、デット(借入)による資金調達よりもリスクが少ない。


「しかも、上場を全面的に支援すると言われている。俺……お前も含めた個人で持っている資産が増えるのも大きい」


翔動の株式は景隆と柊で専有している。

上場時に持ち株を手放せば、不労働で余生を過ごすこともできる。所謂、アーリーリタイアだ。


「そして、経営難に陥ったときに、助けてくれる場合もあるだろう」


親会社が出資した企業に経営的な問題があれば、会社の資産が毀損する。

したがって、子会社は資本注入や業務提携などで救済される場合もある。


「以上を踏まえると、船井さんが提示してきた条件は破格と言える。ここまでの理解は合っているか?」

「あぁ、合っているぞ」


柊の言葉で景隆は安堵した。


「問題はエッジスフィアが将来性があるかどうかだ。別な言い方をすれば船井さんの経営手腕が重要だ。

ここがダメなら泥舟に乗ることになるからな」

「まぁ、そうだな」


「柊は、この先のエッジスフィアの行方を知っているんだろ?」

「あぁ、知っているぞ。今のところ、前の人生と大きな変化は見られない」

「それを知っているうえで、俺が判断しろということだな」

「そうだ」


景隆はしばし考えた後、決断した。


「決めた! 断ることにする」

「わかった」

「えらい、あっさりだな……」

「まぁ、予想はしていた」

「マジか……」


景隆にとっては思い切った決断であったが、柊は泰然としていた。


「じゃあ、理由を聞いてやんよ」

「なんで上から目線なんだ……まぁいいか。

俺たちは世界を取りに行くんだ。誰かの下に付いているようじゃ、そんなことは夢のまた夢だ」

「そうだな」

「そして、今の翔動のスタッフはかなり優秀だと思う。

時間をかければ……いゃ、お前の知識があれば近いうちにエッジスフィアに追いつけるだろう。

そうなると、エッジスフィアの下に付く理由はどこにもない!」

「わかった。それで行こう」


景隆はあえて口にはしなかったが、おそらく柊も同じ思いであることを感じ取った。

何やら別な思惑もありそうだが、必要なときに情報を出すのが柊流だ。


「ふー、この決断に柊が点数を付けるとしたら?」

「80点かな」

「うー、ちょっと待って。自分で残りの20点を考える……決断まで時間がかかったってことか」

「一流の経営者なら即断できるな。知らんけど」

「くそー」


景隆は本気で悔しがった。


「そういえば、もう一個決めないといけないことがある。これはお前の判断が必要だ」

「なんだ?」

「鷹山が翔動(うち)で働きたいらしい」

「げっ!」


この日、柊は初めてうろたえた表情を見せた。

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