第74話 意気投合
「はぁ、経緯はわかりました」
一通り説明を聞いた鷹山は渋々と言い放った。
三名は増上寺付近のカフェで落ち着いた。
不満そうにしている大河原を他所に、景隆は鷹山と合流したことでほっと胸を撫で下ろした。
(よく考えたら、女子高生と二人でいるという状況がリスクしかないな)
「あ、あのっ、会社での石動さんのことを教えていただけますか?」
大河原は懇願するように言った。
「んー……そうね――」
***
「わかります! 石動さんってさり気なくサポートしているんですよね」
「そうそう、菜月ちゃん見る目あるわね!」
(名前で呼んでるし……)
鷹山と大河原は景隆を肴にして盛り上がっていた。
どうやら意気投合したらしい。
(出会った時の緊迫感はなんだったんだ……)
「それで、石動さんの会社はどうなの?」
「はい、石動さんもすごいのですが、柊さんと新田さんというすごい人たちがいるんです」
(俺、もう帰っていいかなぁ……)
カフェの席は女子会になっていた。
「――ねぇ、聞きました?」
「んぁ?」
景隆は意識が飛んでいた。
デルタファイブの仕事は通常通りに行っており、就業後、マンスリーマンションに移動し翔動の仕事をしているため、睡眠時間を削っていた。
柊からは「俺に任せて睡眠時間を確保しろ」と言われていたが、自分の会社の状況を把握せずにはいられなかったのだ。
「せっかく菜月ちゃんが熊本から出向いているのに、ちゃんと相手してあげないとかわいそうですよ」
鷹山は「ねー」と言って、大河原に同意を促していた。
「あぁ、申し訳ない」
「石動さん、ごめんなさい。私のせいで……」
大河原はしゅんとしている。
「いや、俺が大河原のために何かしてやりたくてここにいるんだから、俺が悪かった……それで、何の話だ?」
「菜月ちゃんが学校でめちゃくちゃモテているみたいですよ」
「あぁ、そうらしいな」
景隆は船岡経由で情報を得ていた。
業界について詳しくない景隆はスキャンダルを心配したが、船岡によると、全く心配はないとのことだった。
「そ、そんなにじゃないですけど……ちゃんと全部断っていますよ?」
大河原は上目遣いに景隆を見つめながら言った。
鷹山は「うっ、すごい破壊力……負けていられないわ」とつぶやいていた。
「事務所の方針はわからないけど、高校生なら恋愛くらいは自由にしたらいいと思うけどな」
「うわ……本気で言っているんですか?」
鷹山はドン引きしていた。
***
「すまんな、全部付き合わせてしまって」
「いぇ、むしろ役と――なんでもないです」
景隆と鷹山は大河原を見送り、羽田空港から電車で帰る途中だ。
「あの、石動さん!」
「何だ?」
鷹山は職場で見るような真剣な表情をしていた。
「私も石動さんの会社で働きたいです!」




