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第222話 テレビ取材

「めちゃ楽しいッス」

テレビ局の取材を受けている竹野はハイテンションでインタビューに答えていた。


翔動がオフィスを構える白鳥ビルでは、いつもと違う光景が繰り広げられていた。

テレビカメラや音声機材、照明機材などが所狭しと並んでおり、ディレクターがスタッフに指示を出している。


『メトロ放送買収劇の裏側』というタイトル番組の撮影の一環で、台本には『放送局のホワイトナイト、翔動の実態に迫る』と記されていた。

現在はレポーターを務める二宮が翔動に勤務している従業員にインタビューを行っている最中だった。

竹野はダメージデニムに襟のないシャツを着ており、およそオフィスにそぐわない格好が目に留まったのだろう。

翔動の自由な社風の象徴として、竹野が使われるのだろう。

そして何よりも、テレビとしては格好のネタとなりそうだ。


翔動(ここ)では最先端のコンピュータをガンガン使わせてもらえるんですよ」

竹野はそう言いながら、デスクトップPCの筐体をバンバンと叩いていた。


「失礼ですが、竹野さんは正規雇用じゃないですよね? 翔動さんから提供される設備に差をつけられたりしないのですか?」

「高い技術力があるエンジニアには、誰であろうと惜しみなく投資するのが当社の方針です」


二宮のインタビューに景隆が堂々とした(演技で)答えていた。


「子会社のエンプロビジョンの社員の方もそうですか?」

「はい、もちろんです」

「その代わり、コンプライアンスを遵守することが絶対条件です」

「なるほど、翔動で働きたいという人材はたくさんいそうですね」

「ええ、おかげさまで優秀なエンジニアが集まっていますが、まだまだ足りていません。我こそはと思う方は是非当社にお越しください!」


景隆はここぞとばかりにリクルーティング活動をした。

これはこの番組の取材を引き受ける条件の一つとして景隆が提示したものだった。

先日の記者会見の後から、入社希望者が一気に増えたが、景隆はさらに畳みかけるつもりだ。


***


「このサーバーは何を処理しているのでしょうか?」

ファンの音がけたたましく鳴る中、二宮はサーバーラックを指差して言った。


翔動のオフィスの一角にはマシンルームが新たに区画されていた。


「これは企業秘密です。そのうち世間を大きく賑わすかもしれません」

「えっ! 石動さんがホワイトナイトになったときよりもですか!?」

「はい、そうです」


***


「――とにかく、就業時間を柔軟に決められるのがいいんですよ」

下山は二宮のインタビューにこう答えていた。


「具体的にはどのようなところですか?」

「実は入院している妻が、本日退院するのですが」

「まあ、それはおめでとうございます!」

「私はこれから退勤して、妻を迎えに行けるんです」

「それはすばらしいですね」


景隆はチーフエンジニアとして下山を前面に出すことにしている。

技術的な領域では新田がトップであり、下山はそれに次ぐ立場である。

景隆は新田と柊を一切メディアに出演させない方針を取っており、これは二人の希望でもあった。

したがって、対外的には下山がエンジニアの象徴的な存在として扱われることになる。


(今ごろ、あの二人は何してんのかな……)

今日、柊と新田は大事を取って出社を控えさせている。


粛々と撮影が進み、景隆はこれで自社への取材が終わったと思っていたが、事態は景隆の知らないところで進んでいた。


「下山さん、お願いがあります!」

ディレクターは下山に近づいて言った。

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