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第215話 試写会3

「あ、柊さん。お久しぶりです」

「翔太と同じ柊だし、(あお)でいいわよ」

「わかりました。蒼さん」


柊の姉、蒼は広告代理店に勤務しており、映画の広報担当者だ。

(くっ……柊はこんなきれいな姉がいるなんて、世の中不公平だ……)

蒼とはWeb Tech Expoのときに会っているが、その時はバタバタしており、まともに話すことができなかった。


「まさか、石動くんがこんな有名人になって再会するとは思わなかったよ」

「山本さんも、お久しぶりです」


山本は映画制作会社、夢幻に所属するこの映画のプロデューサーだ。

以前会ったときは制作発表会が行われていた時で、景隆はそのときにスポンサーに名乗りを上げている。


「そうそう、翔太が石動くんにばかりに押し付けているからこうなったんでしょ?」

「大変じゃないとは言えませんが。お互い、納得しているので問題ないです」

「そう? あの子、すっかり表に出ることを嫌がるようになったのよね……」


蒼は柊のことを心配しているのか、ため息をつきながら言った。

柊によると、家族は中身が入れ替わっていることを誰も知らないようだ。

この場にいる蒼を含め、家族は柊の性格が変わったのはあの事件がきっかけであると思っているようだ。

現在、景隆を除いて柊の事情を知っているのは神代と橘、そして新田の三人だ。


(これ以上、柊の話を続けると、俺がボロを出しそうだな……)

景隆は話題を切り替えることにした。


「あの、ご相談があります」


***


「――うむ、企画としてはこれ以上ないくらい面白そうだね」

山本は景隆の話を感心しながら聞いていた。


「でも、実現する可能性はあるの?」

蒼の疑問はもっともだ。

景隆が広げた大風呂敷は今の時点では荒唐無稽に思えるだろう。


「難しいハードルはいくつかあります」

「そうだろうね」


山本は仕事モードの顔つきに変わった。

少なくとも、取り付く島もないということはなさそうだ。


「柊が言うには、将棋連盟との交渉が一番難しくなるようです」

「驚いた。翔太はそんなとこまで手を出しているのね……」

「本格的な接触はこれからだそうですが、ツテはあるようです」


景隆にとっても柊の人脈は謎が多いが、それを追求するのは後回しだ。


「石動くんと柊くんは、世間を驚かせることをやってのけたんだ。僕は実現の可能性はあると思うよ」


山本は前向きに捉えているようだ。

スポンサーの時といい、無謀な挑戦を繰り返していると思われそうだが、映画の制作もリスクを取るという点では似ているのかもしれないと景隆は考えた。


「もし実現しそうになったらですが――」

「あぁ、僕に相談するといい」


***


「ふぅ、よかった……うげっ!」

山本との交渉をなんとか無事に終わらせ、景隆は一息つくつもりだったが、見覚えのある美しい女性が近づいてきた。


「石動さん! 探しました」

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