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第211話 将棋AI

「今の翔動(俺たち)の当面の目標は何だ?」

「し、質問を質問で返しやがった……」


柊に問われた景隆の答えは決まっていた。

金融危機や厄災の対応も控えているが、世界をとりに行くための最初の布石は――


「半導体を作ることだ」


断言した景隆に柊も新田も首肯していた。

この中ではむしろ新田のほうのモチベーションが高いように思えるほど、強い決意を秘めているようだ。

(待てよ……ということは……)


「ひょっとして、半導体を作るための足がかりとして、将棋AIを作るのか?」


どうやら景隆の導き出した答えは正解だったようだ。

言葉にされなくとも、雰囲気でわかる。


「石動は当面の間、ちょっとした有名人になる」

「不本意ながら、そうなるな……」


世間を大いに騒がせたさくら放送の買収騒動の決着をつけたのは景隆だ。

記者会見の様子を鑑みる限りでは、景隆はメディアの救世主として持ち上げられる可能性は高いだろう。


「今の石動――翔動を世間一般はどのように思うだろうか?」

「そりゃ……ん?……謎の方法で巨額の資金調達をしたぽっと出の企業ってところか」

「そんなところだろうな」


石動としては翔動を優秀なエンジニアを集めた技術集団として位置づけているが、柊が指摘したとおり、傍から見たら資金調達がやたら上手な新興企業という印象になるだろう。


「わかった! 世間に注目されているうちに、技術力をアピールして資金調達をしようってことだな!」


石動は柊の思惑を少しずつ理解してきた。

チェスのチャンピオンを最初に破ったAIは、超大手テクノロジー企業が持つ、当時最新鋭だったスーパーコンピュータで開発されていた。

今はここから十年以上経っているが、将棋のプロ棋士を上回るAIは実現されていない。


「将棋でAIが人間を超えるのはいつなの?」

新田の疑問は景隆にとっても聞きたいことだった。


「数年後になるな。対局はインターネット中継されて、当時は結構盛り上がったよ」

「その時計を急激に進めるってことか……そりゃインパクトあるな」


仮に翔動が開発したAIが将棋のプロ棋士を破ることになれば、最先端のスーパーコンピュータ並の技術力があると見られても不思議ではないだろう。


「ちなみに囲碁は?」

「将棋からさらに数年後だな……当時はもっとかかると思われていたんだが、画期的なアルゴリズムが論文で発表されて世界的に大きな反響があった」

「囲碁は世界規模のボードゲームだし、盛り上がるだろうな……それに、俺の知っている限りでは最も難しいゲームだからなぁ」

「ねぇ、囲碁ってそんなにルールが複雑なの?」

「いゃ、将棋よりずっと単純だぞ」

「じゃあ、なんで難しいの?」


新田の疑問はもっともだ。

景隆は柊に助けを求めるべく視線を送った。


「囲碁は将棋と比べて盤面が広いんだよ」

「実際には?」

「将棋は9x9なのは知っているよな? 囲碁は19x19だ」

「単純計算で4.46倍ね」

「あっさり暗算しやがった……」


「将棋の場合は相手玉を詰ませるという明確な目標や手順があるんだが、囲碁にはそれがないんだよ」

「自由度が高すぎるってことね」

「その理解で大体合っている」


新田は未来の技術に興味が惹かれたのか、矢継ぎ早に質問をしていた。

柊の話は景隆にとっても非常に興味深いものであったが、本題に戻ることにした。


「で、今の技術でプロ棋士を超える将棋AIを作ることはできるのか?」

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