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第197話 一歩1000万円の女

「白鳥銀行が100億円出資してくれるそうだ」

「は?」


柊からの連絡に景隆は耳を疑った。

音声は携帯電話越しで、電波の状況で自分にとって都合のいいように聞こえた可能性がある。


「すまん、何て?」

「白鳥銀行――基人(もとひと)さんが100億円出すそうだ」

「聞き間違いじゃなかったぁ!」


***


「どういうことだってばよ?」

景隆は柊を白鳥ビルに呼び出して問いただした。


「基人さんが翻意したんだ」

景隆は白鳥銀行に出資交渉をしたが、基人に断られた経緯があった。


「何で?」

「話せば長くなるが、要約するとメトロ放送が白鳥グループを怒らせたんだ」

「は、端折りすぎだろ……何が逆鱗に触れたんだ?」


かつて基人は「当家に累が及ぶようなことがあれば大義名分となり得る」と言っていた。

景隆はそれに該当する事態になったというくらいしか、想像がつかなかった。


「メトロ放送が綾華にちょっかいを出してしまったんだ」

「は?! バカじゃないの!」


刈谷の権力の恐ろしさは船井を経由して間接的に感じていたが、白鳥グループは規模が桁違いだ。

ペリカンは小魚は丸呑みできるが、クジラを飲み込むことは絶対にできない。


「メトロ放送の人員が、綾華が白鳥グループの関係者だとは認識していなかったために起きたことだ。

綾華はそれも計算に入れて行動しているふしがある」

「白鳥の妹は箱入り娘なのか?」

「決してそういう感じではないんだが……いずれわかるだろう」


綾華に関して、景隆と柊では認識が大きく異なるようだ。


「恐ろしいのは、これを綾華が仕組んだということだ」

「は?! メトロ放送がハメられたってこと?!」


今日だけで景隆は何度驚いたのか数え切れなくなってきた。


「なんで白鳥の妹はそんなことをしたんだ?」

「うっ……」


柊は珍しく言いよどんだ。


「考えられる理由はいくつかあるが、東郷のことを知っている可能性がある」

「それって巷では都市伝説じゃないのか?」

「綾華には黒田さんって人が仕えているんだけど、その程度の情報なら把握できる諜報力があると見ている」


景隆が綾華に状況を打ち明けたときは、東郷の所業には一切触れていなかった。

柊の発言が事実なら、綾華は翔太と資本提携をしている霧島プロダクションのことも詳しく知っている可能性がある。


「白鳥にはお付きの使用人なんていないよな?」

「あいつはただの会社員だからな」

「妹は特別な仕事をしているってことか?」

「……そういうことだ」


綾華個人の話になると、柊の返事は歯切れが悪かった。


「綾華は()()()()()()()だけで、白鳥銀行を動かした」

「今回は100億だから……一歩で1000万くらいだな」

「うそん……」


景隆が知る白鳥は性根が優しい好青年だ。

その妹がそんな恐ろしい存在だとは夢にも思わなかった。


「いいか、絶対に綾華は敵に回すなよ」


柊の言葉は妙に実感がこもっており、景隆はゴクリと唾を飲み込んだ。


「あー……それと……」

「なんだ?」


柊は急に端切れが悪くなった。


「白鳥には優しくしてやってくれ」

「は?」

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