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第195話 挙動不審

「タバコ部屋って問題だよなぁ」

デルタファイブのオフィスで、景隆はぼやくように言った。


「なんだよ、突然どうした?」

白鳥は「何か悪いものでも食べたのか」と言わんばかりの表情だった。


「受動喫煙のことですか?」

どうやら鷹山はまともに取り合ってくれるようだ。


この時代では紙巻きタバコが一般的で、副流煙による非喫煙者への健康被害が問題視されていた。

デルタファイブに限らず、オフィスには喫煙所が設けられていることが一般的だ。


「それもなくはないが、時間的不公平と情報格差だな」

「なるほどなぁ」

「どゆことですか?」


鷹山は可愛らしく小首を傾げた。

天然でこういう仕草をすることが、男性が多いデルタファイブの職場で人気を集める要因となっていることを当の本人は自覚していなかった。


「喫煙者は休憩時間が長い傾向があるんだよ」

「あぁっ! 分かります!」


白鳥の説明に鷹山は思い当たるふしがあるようだ。


「それで……情報格差ってのは何ですか?」

「タバコ部屋では喫煙者同士の交流が結構あるんだ」

「そりゃぁ、あるでしょうね」


デルタファイブの喫煙者はそれなりの比率で存在しており、年齢層は高めだ。


「そこで、雑談しながら延々とサボっていたら問題なんだけど――」

「それはよくないですね」


デルタファイブは休憩時間は自己申告制だ。

景隆は喫煙者の全員が馬鹿正直にその時間を申告しているように思えなかった。


「もっと問題なのは仕事で重要な情報共有や意思決定がその場で行われているんだよ」

「ええっ!? それってずるくないですか!? そもそも、そんなことがあるんですか?」


今度は白鳥が思い当たるふしがあるようで、「あるんだなぁ……これが」と言った。


「まさに先程それが行われていて、俺が鳥嶋さんのところに貸し出されるらしい。

烏丸さんと鳥嶋さんの間で何らかの話があったようだ」

「その話が喫煙所で行われたと?」

「そういうことだ」

「そんなの密約じゃないですか!」


鷹山は自分のことのように怒っていた。


「それで悔しいから、こうやって雑談をしているわけなんだが」

「え? 今の話ってあてつけだったの?」


白鳥はいつも景隆に振り回される側になっているが、根が優しいためか気にした様子は見られなかった。


「白鳥の妹が挙動不審らしいんだ」

「え? その話するの?」

「白鳥さんの妹さんって、かなり美人なんでしたっけ?」

「あそこまでいくと芸術品だよ」

「えっ!? 会ったんですか?」


鷹山はとたんに不機嫌になった。


「俺は鷹山のほうが魅力的だと思うよ」

「何のフォローだ?」

「石動もそう思うだろ?」

「まぁ、そうだな……そもそもあっちは未成年だし」

「えっ……///」


(なんだなんだ?)

鷹山は真っ赤になってうつむいていた。


「で? 何が挙動不審なんだ?」

「急に一緒に出かけたいとか言い出したんだよ」

「兄妹仲睦まじくでいいじゃないか」

「こんなことは今までなかったんだよ。

子供の頃ならそういうこともあったんだけど……

今は俺より仕事が忙しいから、一緒に行動することは皆無なんだよ」

「へぇ、未成年なのにお仕事をされているんですね」


鷹山は感心していたが、景隆も綾華の仕事が何であるかは分かっていなかった。


この綾華の行動が世間を騒がすほどの大事になることを、このときの景隆と白鳥は知る由もなかった。

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