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第194話 それぞれの決断

「今回はエッジスフィアに譲ってください」

悩んだ挙句、景隆は船井を助けることを優先した。


正直なところ資金は喉から手が出るほど欲しいが、それ以上に今エッジスフィアが潰れてしまうことの方が問題だと判断した結果の結論だった。


「承知いたしました」

芦屋は景隆の答えが分かっていたかのように、返答した。

その表情からは彼女が何を考えているのかは読み取ることができなかった。


「反対されないんですね」

「姫路には石動さんの指示に従うよう言われております」


芦屋はいつもどおりのフラットな表情を保っているため、本心で言っているのか分からなかった。


景隆にとっては考えに考え抜いたうえでの結論だった。

この結論に至った一番の理由としては、船井を助ける手段がこれ以外にないことだった。

さくら放送株取得のための資金調達は別の機会があるかもしれないが、エッジスフィアの事業を継続できるほどの融資をしてくれる金融機関は限られているだろう。

差し迫った状況にあるのは翔動ではなく、エッジスフィアであることは明白だった。

エッジスフィアが潰れた時点で、オペレーションイージスは失敗となる。


また、エッジスフィアが先に潰れてしまうと、さくら放送株を先に手放されることになる。

そうなると翔動とSPC(自分たち)の持株の価値が急激に下がるだろう。

この場合、翔動とその出資者にとって大きな損失となる。


青山銀行からの出資額が一気に勝敗を決めるほどであれば、翔動にとってエッジスフィアを見捨てる選択肢もあり得るが、青山銀行から提示された融資額はそこまで大きくはなかった。

これらのことを総合的に判断すると、エッジスフィアを助ける以外の選択肢はないという結論に至った。


「姫路さんなら同じ決断をしたのではないでしょうか」

「さぁ、どうでしょうか」


景隆は芦屋が姫路の監視役であるという説を捨てていなかった。

姫路からは、このような決断を誤るようであれば、見切りを付けろと言われているのではないかと想像した。


景隆は自問した――仮にこの決断をする前に柊に相談していたら、どうなっていただろうか?

経営者である自分がこの程度の決断に誰かを頼っているようでは見切りを付けられるのではないかと思われた。


「「……」」


白鳥ビルの会議室は静寂に包まれた。

今の景隆には芦屋やその裏にいる姫路の思惑を読み取ることができなかった。


「それでは青山銀行にはそのように伝えておきます」


芦屋は何事もなかったかのように自分の仕事に戻っていった。


***


(タイミングがよすぎるけどまさか……)

青山銀行で船井は新規の融資について話し合っていた。


銀行からの融資を止められ、窮地に陥っていた船井だったが、それを見越していたかのように青山銀行から融資の申し出があった。


以前はリースの契約が切れることを予知していたかのように動いていた人物がいた。

船井は二度目のピンチにタイミングよく救いの手が現れたことが偶然とは思えなかった。


「当行が融資するに当たって、一つ条件がございます――」


青山銀行が突きつけてきた条件は、船井にとって厳しい選択を迫るものだった。

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