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第192話 オペレーションイージスの危機

「ちょっとマズイ展開になっている」

柊の表情は深刻だった。


「フォーチュンアーツのことか?」

景隆は柊がフォーチュンアーツの動きが怪しいと言っていたことを思い出した。


フォーチュンアーツは霧島プロダクションと敵対関係にある大手芸能事務所で東郷が社長を務めている。

エッジスフィアと資本提携しており、エッジスフィアが放送局の買収に成功すると、東郷のメディアへの支配が強まる恐れがある。

加えて、敵対関係にある霧島プロダクションが排除される可能性が高く、霧島プロダクションと資本提携をしている翔動にとっても痛手となる。


「あぁ、フォーチュンアーツ――もしくは東郷が北山ファンドにも出資している可能性が高くなってきた」

「マジで!?」

「北山ファンドはメトロ放送に持株を売却する可能性が高まった」

「船井さんを裏切ったってことか?」


船井と北山が手を組み、さくら放送とメトロ放送を乗っ取るというのが景隆が想定している筋書きだった。


「裏切ったというか、北山さんにとっては持ち株が高く売れればいいんだよ」

「刈谷さんが北山さんにいい条件を付けたってことか」

「状況からの推測だが、おそらくそうだ」


景隆は柊がここまで具体的に推測できるのかが不思議だったが、あることに気がついた。


「あれっ? もしかしてフォーチュンアーツにとっては船井さんが勝っても、刈谷さんが勝ってもどっちでもいいってことか!?」

「そういうことになる」

「マジか……両建て ※1 じゃねぇか……」


景隆はここにきて柊が『マズイ』と言った意味が分かった。


「フォーチュンアーツが北山ファンドに出資している根拠は?」

「明確な根拠はないが、メトロ放送がフォーチュンアーツのタレントを優遇し始めたんだよ」

「メトロ放送にとって、本来ならエッジスフィアと資本提携しているフォーチュンアーツは敵だからな」

「東郷は北山ファンドに出資する条件として、所属タレントを優遇するよう働きかけていると思われる」

「加えて、霧島プロダクションを排除するよう働きかけてもおかしくないな」

「そのとおりだ」

「マズイな」

「あぁ、マズイ」


柊の推測が事実なら、オペレーションイージスにとって危機的状況と言えるだろう。


「なぁ、メトロ放送と北山ファンドの持株を合わせても過半数に足りないんだろ?

今の膠着状態なら、北山さんの影響力も限られるんじゃないか?」

「今だからこの程度で済んでいるとも言える。でも、時間は刈谷さんに味方している」

「そっか、ホワイトナイト……尾幌さんか!」


柊の話では、この後創革インベストメントの尾幌がメトロ放送を救済することになっている。

そうなってしまうと、刈谷の勝ちが確定する。

景隆が思っている以上に状況は差し迫っていた。


「つまり、尾幌さんが動き出す前にケリを付けないといけないってことだな」

「そうだ」

「どうやって、ケリを付けるんだ?」

「俺たちがキャスティングボートを握るしかない」

「つまりは……」

「北山ファンドを上回る株数を取得する必要がある」

「やっぱ、世の中金かぁ……」

※1 同じ金融商品で買いと売りの両方のポジションを同時に持つこと

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