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第188話 船井の野望

「彼の下についていたのは――」

「一人を除いて、エンプロビジョンの社員です」


下山には竹野に加えて、エンプロビジョンから引っ張ってきた人員を付けていた。

人選は下山に一任していたが、船井の話によると下山の指示のもとで彼らが相当良い働きをしていたようだ。


「ううぅ、気づかなかった……俺もまだまだですね……」

デルタファイブの業務やさくら放送株の件と掛け持ちとはいえ、景隆はプロジェクトメンバーの働きを把握できていなかったことになる。

船井の話を鵜のみにできないにしても、今後の課題として強く意識することにした。


「岡目八目ってやつだよ」


船井はシマアジを美味そうに食べていた。

船井は景隆とは違い、システムの作業は一切行っていなかったため、あの場においては全体を俯瞰できる状況だったようだ。


「なんとなくだが、石動くんの経営方針が分かってきたよ。

きみは人材を非常に重視するタイプだ。

特に下山くんはきみの会社に対して強い忠誠心を持っている。

そうでなければ、あそこまで献身的に働けないよ」


船井は翔動の仕事ぶりを少し見ただけで、さまざまな点を看破しているように思えた。

このまま自社の話を続ければ、いずれはさくら放送株の動きにたどり着いてもおかしくはない。

景隆は船井に自分のことを語ってもらうことにした。


「あ、あの……エッジスフィアはこの先どのような事業展開を考えているのですか?」

「それはテレビ局を買収してどうするかという話かい?」

「もっと先の……船井さんがこの先何を見据えているのかが興味があります」


景隆はテレビを持っていないこともあり、放送事業にはあまり興味を持てなかった。

今の時点では霧島プロダクションとエッジスフィアの窮地を凌げればよいと考えている。


船井は「ほぅ、そうくるか」とつぶやき、少年のような表情を浮かべて言った。


「宇宙事業だよ」

「宇宙!? 具体的にどんな事業ですか?」


景隆は自分の野望の大きさだけは誰にも負けないという自負があったが、船井の発言はそれを上回るような気がして少し悔しさを覚えた。


「あれ? この話をすると大抵の人は焦点がぼやけるんだけど、石動くんはリアルな話として受け取っている顔だね」

「船井さんのことですから、商業的な目算があることを前提に考えているんですよね?」

「すごいね。大抵は『夢物語』とか『ロマン』とか片づけられるんだけど、ちゃんとビジネスとして聞いてくれたのは初めてだよ」


(いゃ、この程度で感心されても……この中トロうまいな!)

景隆から見た船井は徹底的なリアリストだ。

宇宙飛行士になるとか、少年が将来の夢に抱くようなことを考えているとは思えなかった。


「民間で人工衛星を打ち上げるためのロケットを飛ばしたりするのでしょうか」

「まさにそのとおりだ! 石動くんだったらどんなビジネスを考える?」

「解像度の高い、地球上のありとあらゆるデータを得たいです」

「ふむ、そのデータをどう使う?」

「そうですね……思いつきですが、資源探索やマーケティング……そして都市計画でしょうか」

「なかなか分かっているじゃないか!」


船井は景隆の肩をバシーンと叩いた。かなり機嫌が良いようだ。


「僕はね、衛星によるブロードバンドサービスをやりたいんだよ」

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