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第185話 本当の狙い

「ば、ばかな……信じられない……」

榛名は驚愕した。


エッジスフィアのマシンルームでは、リース契約切れが迫っているマシンの移行作業が行われていた。

イーストリースからリースしているサーバーなどの代替機器を、縦山レンタリースから調達したマシンに置き換えるという大規模な作業だ。


このプロジェクトを実質的に仕切っているのはCTOの榛名ではなく、翔動という聞いたこともない小さな会社で、社長の石動という若者がプロジェクトマネージャーを務めている。


翔動を薦めてきたのは縦山レンタリース社長の奈多であり、船井は石動と交流があったようで、すぐに翔動と業務委託契約を締結した。


翔動の面々は初見であるはずのエッジスフィアのシステムをまたたく間に掌握し、完璧な移行プランを提示してきたため、榛名としては反対のしようがなかった。


「白鳥くん、クラスターを切り替えて」

「了解です」


インフラ面を仕切っているのは鷺沼という女性で、本来はデルタファイブに所属しているようだが、今回は助っ人として参加しているようだ。

彼女のインフラの知識は広範囲にわたり、デルタファイブ以外のベンダーのマシンに対しても自社の製品のように扱っていた。


彼女の下についている白鳥という男性や鷹山という女性もかなり優秀で、鷺沼の指示のもとでシステムが円滑に新しいマシンに移行されていた。


「竹野、デプロイの準備は?」

「おけッス」


翔動のCTOである新田という女性も、鷺沼と同様に桁違いのスキルを持っていた。

彼女はプログラミングの造詣がマリアナ海溝のように深く、エッジスフィアで動作しているアプリケーションを別のアーキテクチャのサーバーにいとも簡単に移行していた。


加えて、デプロイという仕組みを利用して、システムの構築が人力ではなくオートメーション化されていた。

この仕組みの基盤を作ったのが新田であり、その下についている下山と竹野という男性はこの仕組みを理解したうえで完璧に立ち回っていた。

石動によると、翔動ではシステムの構築がほぼ自動化されているという。


「は、榛名さん……この人たち……何者なんですか?」

「社長の知り合いだそうだ」

「はぁ、さすが社長ですね」


エッジスフィアの従業員は感心しきりだった。


榛名はエッジスフィア創業時から船井を支えてきており、技術面ではその社名に恥じないよう最先端を追いかけていたつもりだった。

しかし、翔動が持っている技術はまるで未来でも見てきたかのように斬新で先進性があった。

榛名は翔動の働きぶりを見て、まだ小さなベンチャーだったころのエッジスフィアを思い出して胸が高鳴った。


***


「まさか、これほどとは……」

船井は鷺沼や新田を見て驚愕していた。


(さすがの船井さんでも、そう思うよな……)

エッジスフィアは成長著しいインターネット業界の中でも、急激に成長した企業だ。

それが実現できた要因として社長の船井の手腕があるだろうが、優秀な社員がそろっていることは容易に想像できた。

その船井をもってしても鷺沼や新田は規格外のようだ。

(まぁ、鷺沼さんは翔動(うち)の社員じゃないんだけどな)


「石動くんはこの状況を予見していたかのように準備していたみたいだけど?」


船井の疑問はもっともだ。

さすがに柊の予言とは言えなかったので、用意した言い訳を言った。


()()で刈谷さんを追っていたら、運良くイーストリースの情報を入手できたんですよ」

「きみはデルタファイブの社員でもあったよね?

これじゃ次にシステムを導入するときはデルタファイブを検討せざるを得ないじゃないか。

まさか、石動くんはそこまで読んでいたなんて思わなかったよ」

「はは、バレちゃいましたか」


エッジスフィアの基幹システムのサーバーはリースではなく、購入資産だ。

景隆と似鳥の狙いとして、エッジスフィアのシステム更改時にデルタファイブのサーバーを売り込む算段があった。


景隆はこの先の()()()()()に船井が気づいていないことに安堵した。

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