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第178話 名探偵

「鷺沼さん、縦山電機にお知り合いはいませんか?」

景隆はもう一つの相談事を持ちかけた。


「およ?」

さすがの鷺沼も意表を突かれたようだ。


縦山電機は工業計器やプロセス制御システムの開発・製造を行う電機メーカーだ。

縦山電機はかつて、デルタファイブの日本法人『日本デルタファイブ』の筆頭株主だった。

日本デルタファイブは縦山電機と米国のデルタファイブによる合弁会社として設立された。

当時の資本比率は縦山電機51%、米デルタファイブが49%だ。


これはデルタファイブの主力事業が計測器だったことに起因している。

デルタファイブがコンピューター関連事業にシフトしていった結果、縦山電機との資本関係はなくなり、現在の日本デルタファイブは米デルタファイブの100%子会社となっている。


景隆がデルタファイブに入社した時点では、縦山電機との関係性はなくなっていた。

しかし、鷺沼は縦山電機との合弁会社だった時期を経験しているため、景隆はこのような相談を持ちかけた。


「んー……同期で縦山電機に出向した人はいるけど……石動くんの目的は本当に縦山電機なの?」

「うへぇ」


勘のいい鷺沼は、景隆の本当の目的が違うところにあることに気づいたようだ。


「はい、本命は縦山レンタリースです」

「そうだよねぇ、さっきリースの話してたんだし」


鷺沼が景隆の目的を突き止めたのは、オカルト的な勘ではなく論理的な帰結のようだ。

縦山レンタリースは縦山電機の子会社で、かつては日本デルタファイブと兄弟関係にあったともいえる。


「ふむふむ、なんとなく見えてきたぞ」

鷺沼はハンチング帽を指で動かすような仕草を見せた。

もちろん、彼女は帽子などかぶっていない。


「石動くんの知り合いの会社がリース契約を止められそうな危機に陥っている。

新しいリース会社を紹介してシステムの移行も手伝う……違うな、ついでにそのシステム移行でも稼ごうとしている。

でも本当の目的はその会社を潰したくない……そんなところかな?」


鷺沼は再び挑戦的な目で景隆を覗き込んでいる。


「ご、ご想像にお任せします」

景隆は内心で両手を挙げて降伏していた。


「まだ、何か隠しているな……クンクン」

「ちょっ……」

「その会社って実はすごい会社なんじゃないの? リースでサーバーを調達しているってことは比較的若い会社で、カリスマ経営者が……」

「す、ストーップ」


景隆はたまらず(心の中で)タオルを投げた。

実際は柊が知っている未来の知識に関する話だったが、鷺沼は柊の脳内の情報を掠め取っているのではないかというほど、的確なところを突いてきた。


「社内に縦山レンタリース出身の社員がいるから直接聞いてみれば?」

「うそん……」


景隆はダメもとで鷺沼に相談したが、大当たりを引いたようだ。


「それで、その社員とは?」

「社員というか役員かな? ……にとりんだよ」

「ま?」


鷺沼の口から出てきたのは、景隆がよく知る人物だった。

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