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第171話 綾華の謎

「まぁ、仕方がないな」

霧島プロダクションの社長室で、景隆の報告を聞いた柊はさらりと言った。


「でも、せっかく柊が完璧なお膳立てをしたのに……」

景隆は悔しさを抑えきれなかった。


どんな魔法を使ったのか、柊は前社長の逢妻の持ち株を時価で買い取る約束を取り付けていた。


「俺が白鳥銀行から資金調達できていれば、もう勝ち確定だったんだよな?」

「まぁ、そうなるな」


景隆が調達した資金で逢妻の持ち株を買い取ることができれば、目標の株数に到達できていた。

市場から株を買い付ける場合、自身の注文で株価がつり上がってしまうため、株式の取得コストは現在の時価よりも高くなる。

加えて、今後TOBが行われた場合、株価は現在よりも1割から2割は上昇する。


柊が持ち帰った成果は、この取得コストをゼロにするものだ。

取得コストが10億から20億円削減できることになり、その分は翔動や出資者の利益に還元できる。

それだけに景隆は結果が出せなかったことを悔やんでいた。


「逢妻氏が持ち株を市場や第三者に放出しないことが分かりましたから、まだ時間はあると思いますよ。

もし船井社長に売却していたら、その時点で終わっていましたから」


橘は冷静に現在の状況を分析しているようだ。


「白鳥銀行がダメな以上、別のところから調達する方法を考えないといけないですね」

「そうですね。霧島プロダクションに出資できる金融機関は――」


景隆が見たところ、柊と橘はしっかりと連携がとれているようだ。

景隆は強力なパートナーがいる柊を羨ましく思った。

翔動と霧島プロダクションは資本関係がありビジネスパートナーであるため、景隆にも橘と一緒に働く資格はあるのだが、柊と橘の二人には割って入れないような深い絆があるように感じた。


「白鳥銀行といえば、白鳥の妹に会ったぞ」

「ええええっ!? しらか――綾華に会ったの?」

「えっ? そんなに驚くこと?」


柊は資金調達に失敗したという報告を聞いたときは平然としていたのに、今は仰天していた。

いつもは柊のほうが人生経験が長いためか、余裕がある反応ばかりで少し悔しい思いをしていた景隆だったが、一本返した気分になった。


問題は橘の反応だった。

橘は「あら?」という表情を浮かべて驚いていた。

普段めったに表情を崩さない彼女が、このような反応を見せるのは珍しい。


「橘さんも白鳥の妹をご存じなのですか?」

「ええ、それなりに……」


橘は柊に視線を送り、柊はそれを受け取ったのか、こくんと頷いていた。

柊と橘は言語を使わずにコミュニケーションできるようだ。

(そういうとこやぞ)


「綾華は()()のことを何か言っていたか?」

「親父さんと一緒にいたから、手伝っていたんだと思う」

「あれ?」「おや?」


二人にとって、景隆の発言が意外だったようだ。


「石動さんらしいですね。柊さんもそうでしたし……」

橘は何やら自分の中で結論を出し、それに納得しているようだ。


景隆の中で綾華についての謎が深まった。

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