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第167話 正念場

「たしかに当行にとっては悪くない話だ」

白鳥銀行の頭取、白鳥基人(もとひと)は景隆の提案を一通り聞き、納得したような表情を浮かべた。


白鳥銀行の頭取室は本店ビルの最上階に位置し、天井が高く広々とした空間になっている。

壁一面の大きな窓からは都心の眺望が一望できる。

部屋の中央には、重厚感のあるデスクと革張りの椅子が配置され、壁には誰もが知る有名な絵画が飾られている。

以前の景隆であれば、この部屋にいるだけでも圧倒されていただろう。


景隆と柊は、基人と面会するために綿密に準備を重ねてきた。

そして今、白鳥銀行からの出資を受けるために、全身全霊を尽くして話し終えたところだった。


景隆はこれまで四十五銀行やアストラルテレコム、サイバーフュージョンなどから大口の出資を受けることに成功していた。

加えて、白鳥銀行からの出資を獲得できれば、目標である200億円の調達がすぐに達成できてもおかしくなかった。

白鳥銀行の資本力はそれほど莫大であり、頭取の基人はその決定ができる人物だ。


この極めて重要な基人との交渉は、本来なら柊が同行する予定だった。

しかし、柊にはどうしても外せない用件ができたようだ。

景隆にとっては今以上に重要な用件など存在し得ないと思えたが、それは柊も重々承知だろう。

柊はそれほど重要な何かを抱えていることになる。


(めっちゃ緊張してきた……)

景隆の喉はカラカラに乾いていた。

基人の決断一つで、オペレーションイージスの成功は左右されることになる。


オペレーションイージスとは景隆が名付けた作戦名で、霧島プロダクションやさくら放送、そしてエッジスフィアを守るという目的に由来している。


「申し訳ないが、答えはノーだ」

「……」


景隆は落胆のあまり、項垂れそうになったが、それを悟られないよう必死にこらえた。

景隆、そして翔動にとって最大の賭けであり、それが破れた瞬間だった。


「当行――いや、白鳥グループは特定の報道機関に肩入れできないのだよ」

「詳しくお伺いしてもよろしいでしょうか」


景隆はなんとか声を出しながら尋ねた。


「白鳥グループは各報道機関に均等に広告料を支払っている。これはバランスを保つためだ」

「特定の報道機関がネガティブキャンペーンをしないようにするためでしょうか」

「それも要因の一つだ。我々のような大きな資本の出資先が特定の報道機関に偏ると、さまざまな軋轢や思わぬ副作用をもたらすのだよ」

「なんとなくですが、わかる気がします」


そう言った景隆であったが、釈然としない思いも少なからず残っており、これを表に出さないよう必死にこらえた。


「こんな杓子定規なことを言いたくはないが、大人の事情というやつだ。

もちろん、当家に累が及ぶようなことがあれば大義名分となり得るが」


(大義名分か……)

景隆はそれを用意できていなかったという時点で、自分の負けを確信した。

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