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第156話 5%ルール

「そもそも狭山って柊の同級生なんだっけ?」

「あぁ、俺はまったく覚えていないが中学の同級生らしい。それに……」


柊は言葉を濁した。

景隆が柊の表情をうかがう限りでは、狭山とは何やら因縁があるようだ。


『もしかして、あの件に関連しているのか?』

『少なくとも全く無関係ではない』

『橘さんは知ってそうだな……だけど新田がいるから、ここじゃ話せないな』

『いずれにせよ、今話すことではない』


アイコンタクトで会話する景隆と柊を、新田は「また始まったわ」と言いながら見つめていた。


***


「現状を整理します。フォーチュンアーツの狭山氏の行動ですが、これは東郷社長の指示である可能性が非常に高いです」


白鳥ビルの会議室では役員会議が再開されていた。

橘の発言は実体験があるかのような、妙な説得力があった。


「つまり、狭山の意思とは関係なく行われていると」

「そうですね。したがって、狭山氏に対して働きかけても効果は薄いと思われます」


柊の確認に橘は即答した。

芸能界における東郷の権力は絶大で、さらにフォーチュンアーツ所属タレントは彼に絶対服従していると考えられる

東郷はテレビ局にも強い影響力を持っているため、さくら放送に抗議をしても聞き入れられないだろう。


「東郷がこのタイミングで動いたのは、エッジスフィアとの資本提携が関係しているのか?」

「そうだろうな」

「もうさくら放送の株を買い占めているってこと?」

「いや、それはない」


景隆はエッジスフィアがさくら放送を通じてメトロ放送の経営権を握り始めたと考えた。

しかし、柊は即座に否定した。


(柊が断言できるのは未来を知っているからか? いや違う。エッジスフィアとフォーチュンアーツの資本提携は柊の経験していない出来事だ……となると――)


「あー……5%ルールかぁ」

「そうだ」

「どゆこと?」


景隆と柊の会話に新田がついていけなくなったようだ。


「上場企業の株式を5%以上保有すると、大量保有報告書を提出する義務が生じるんだ」


上場会社の発行済株式総数の5%を超えて実質的にその株式を取得した者は、原則として、取得日から5日以内に内閣総理大臣等に対して大量保有報告書等を提出しなければならない。

この制度は5%ルールと呼ばれる。


(しかし、5日の猶予があるならすでに動いている可能性も……)


「まだその報告書が出されていないってこと?」

「あぁ、確認したが提出されていないし、さくら放送の株価や出来高にも不自然な動きはない」

(さすがは柊だ。俺の疑問を先回りして調べている)


新田は手元のラップトップPCで、柊が言った情報の真偽を確認しているようだ。

この先、景隆と新田はさくら放送の株価を空で言えるほどになる。

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