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第145話 サプライズ

「こんなところにいていいのか?」

景隆は申し訳なさそうに言った。


地元のレストランではささやかな卒業祝いが開催されていた。

学校での大河原の様子を見る限りだと、友人とカラオケにでも行きそうな気配を感じていたため、自分が邪魔したのではないかと思われた。


「はい、まだしばらくは地元にいるので大丈夫です!」

大河原は何も問題ないという表情で言い切った。


「それに……男子がいると面倒なので……」

「なるほどね」


船岡は納得しているようだが、景隆にはさっぱりだった。


本来であれば、大河原の都合がよくなる時間まで待ってから、卒業祝いをするつもりであった。

その待ち時間には、船岡と大河原の両親にあいさつに行くことを考えていた。


「それにしても、大河原って、あんなにだだをこねるんだな」

「うぅっ……忘れてほしいです」


大河原は真っ赤になって俯いた。


←←←


「この学校も久しぶりですね」

船岡はこの先見ごろを迎えるだろう桜の木を見ながら言った。


(この人がいるだけで桜が満開になりそうだな……)

景隆は今日の目的を忘れて、船岡に見とれていた。


「あ、あれかな? ペコペコと謝ってますね」

「あぁ、なるほど……」


船岡は状況を理解しているようだ。


「もしかして、告白ですか?」

「石動さんの鈍さは、いつか命取りになりますよ?」


船岡は呆れるように言った。


「今日はすみません、俺の思いつきで」

「いえ、菜月は当事務所にとっても大事なタレントですから」


景隆は大河原の卒業祝いをしたいと船岡に申し入れたところ、「では、行っちゃいましょうか?」と夕食の買い出しくらいのノリで言われたことに驚いた。

堅実な性格に見える船岡だが、時折突飛な言動を見せることがあり、それが彼女の魅力をさらに引き立たせていた。


「おや、終わったようですね」

告白イベントは男子生徒が玉砕したようだ。


大河原には年相応の恋愛をしてほしいとも思っていたが、あまりのめり込みすぎると仕事に影響がありそうで、景隆の心中は複雑だった。


大河原は友人と思われる女子生徒と親密に話していたが、景隆を見つけると――


「あ、あっ……」

大河原は小刻みに震えながら、涙をこらえているようにも見えた。


「菜月、どげんしたと?」

女子生徒は大河原を気遣っているようだ。


「大河原、卒業おめでとう……って、うおおぉぃ」

景隆が言い終わる前に、大河原は景隆に駆け寄り、抱きついて泣き出した。


女子生徒は両手を口に当てて驚いていた。

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