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第141話 クーデター

「品田先輩のお力で、アクシススタッフとエンプロビジョンの契約を切れませんか?」

「は?」


豊岡の提案に品田は驚いていた。

豊岡は主要顧客であるアクシススタッフとのつながりを断つことで、翔動から来ている役員二人の責任にするつもりだ。

再び品田のコネを使って再契約にこぎつければ、豊岡の功績となって一石二鳥になると考えていた。


「営業から、契約金額を引き上げられているんですよね? 契約を解除するには十分な理由になると思いますが」

「白状するが、エンプロビジョンの人材は顧客から得られる単価が高いんだ。アクシススタッフ(うち)にとってもドル箱なんだよ」


今になって田代の発言が事実であることが判明した。

それでも豊岡は食い下がった。


「このままでは、ズルズルと契約金額が上がってしまいますよ」

「それはエンプロビジョン(お前のところ)にとって都合がいい話だろ?

それに、契約を切ってしまったらアクシススタッフ(うち)を経由せずに顧客と直接契約をできるからな。

エンプロビジョン(そっち)はそれを狙っているんじゃないのか?」

「そんなわけでは……」

アクシススタッフ(うち)からエンプロビジョン(そっち)に人材が流出している状況で、よくそんなことが言えるな」

「う……」


品田が言っていることはすべて翔動の人員が招いている事態だ。

しかし、エンプロビジョンの最高責任者が自分である以上、豊岡は返す言葉がなかった。


***


高津(たかつ)くん」


豊岡は採用担当の高津を呼び出した。

高津はエンプロビジョンの創業時からの社員だ。

綾部が解雇されてしまった今、豊岡にとって唯一の信頼できる社員であった。


高津は石動と柊の評価も高く、エンプロビジョンが翔動の傘下になってからは給与がかなり増額していた。

これは柊が人事改革の一環として、採用部門にも営業部門と同様の大きなインセンティブを設定したことが影響している。


「なんでしょうか?」

「役員の二人のことだが――」


豊岡は石動と柊がハラスメント行為をしているという文書を作成していた。

この行為が事実であるということを高津に証言させるつもりだ。


「い、いや無理ですよ……そんな事実はありませんし……」


難色を示す高津に、豊岡は社長命令と言って強引に押し切った。


(よし、次は――)

豊岡は翔動を除いた株主に対して、告発という名目でメールを送信した。

内容は経営不安の要因として石動と柊が経営に過度に介入し、私物化していること、この二人が従業員に対してハラスメント行為を行っているものだ。


株主は詳細な経営状況を把握していないと考えられるため、あたかも信憑性のありそうな情報を作成することで説得力を持たせられると判断した。


これらの情報を告発することで二人の責任を問い、あわよくば解任まで追い込む算段であった。

株式の過半数は翔動に握られているが、残りの株主を味方につけることで、少なくとも二人の影響力を弱めることはできるだろうと思われた。


***


「よしっ」


豊岡は『臨時株主総会招集のご通知』という件名のメールを見て勝利を確信した。

豊岡が告発した内容を元に、株主が動いたことは間違いない――この時は、そう思っていた。

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