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第138話 職業選択の自由

「いいと思うぞ」

白鳥ビルの会議室で景隆の報告を聞いた柊は、あっさりと言った。


「エンプロビジョンにとっては貴重な人材になるんだから、簡単に手放すのはもったいないんじゃないの?」


上田の主張はもっともだ。

デルタファイブへ派遣する人材の単価は業界内では高額な部類だ。

黄金の卵を産むガチョウを易々と手放すようなことになると言っているのだろう。


「俺も似鳥さんから提案されたときにそう思ったが、それ以上に利点があると判断したんだ」

「トレーニングをタダで受けられて、人材育成が捗るってこと?」

「それもあるが、結局、どこに就職するかはその人の自由なんだよ」

「あっ!」


上田は景隆の意図を理解したようだ。


「デルタファイブに就職できるほどの人材を、翔動(うち)が獲得できるチャンスもあるってことね」

「あぁ、憲法で定められているほどの権利だから、契約では絶対に縛れない」


似鳥の要求はエンプロビジョンの契約が満了した後に、デルタファイブへの直接雇用を制限しない条項を入れることだった。

当然のことながら、デルタファイブへの就職は強制ではなく、本人の意思に委ねられる。

景隆は特に優秀な人材がいた場合、翔動への就職を促すために、デルタファイブよりも魅力的な雇用条件を提示するつもりだ。


「自社サービスのほかに、白鳥不動産やMoGeなどの案件もあるので、翔動(うち)も人手不足なんだよ」

「なるほどね」

上田は柊が話した台所事情を、把握していた。


「それに、デルタファイブへ就職できるキャリアパスがあることで、採用が捗ると思う」

「現時点でデルタファイブの要求レベルに達していなくても、トレーニングを受けてエンプロビジョン経由で働くことで、デルタファイブの社員になれる夢を見れるってことね」

「あぁ、夢ではなく実現可能であることを証明するために、実績を作っておきたい」

「デルタファイブの社員である石動だからこそできる荒業ね!」


上田は少し考えた後に続けた。


「そうなると、あの人材が回せるかもね」

「あぁ、そうだな」

「ん、なんだ?」


景隆が不在の間に、柊と上田の間で何かがあったようだ。


「今になって、アクシススタッフからエンプロビジョンへの転職希望が増えているのよ」 ※1

「え、なんで?」

「私はこのオフィスの存在が大きいと思っているわ」


上田は会議室から見える景色を一望しながら言った。


「一等地に拠点があることで、会社の信用度とかブランドが高くなったってこと?」

「そうよ」

「そんなもんなのか……」


釈然としない景隆であったが、自分が認識している以上に立地の影響は大きいのかもしれないと考え直した。


「いずれにせよ、エンプロビジョンの事業は大きくなるわね」

ご機嫌な上田を他所に、これを快く思わない人物がいることを、この時の景隆は気づいていなかった。


「あぁ、その前にやることがある」

「のわっ!」「ほぇ!」


景隆と上田は柊の恐ろしい気配に悲鳴を上げた。

※1 「芸能界に全く興味のない俺が、人気女優と絡んでしまった件」 210話 https://ncode.syosetu.com/n8845ko/210/

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