第122話 課題
「ふむ、納得しかねます」
安堂はにべもなく言った。
景隆と柊はSREテクノロジーズの会議室で、白鳥不動産の社長である詮人と、その子会社SREテクノロジーズの社長である安堂と対峙していた。
安堂は気難しそうな風貌で威厳があり、若作りの詮人よりも年上に見えるほどであった。
安堂は翔動がSREテクノロジーズにコンサルティングをするという、詮人の提案に露骨に難色を示した。
(親会社の――しかも白鳥グループの社長相手にすごいな……)
安堂は景隆と柊を見下すように睨めつけていた。
景隆は安堂のこの態度には思うところがあったものの、詮人に対して毅然とした態度を取っていることは好感できた。
「君たちの会社は、テレビで多少騒がれているが、大した実績もないだろう? なぜ当社がそのような会社のコンサルティングを受ける必要があるのか大いに疑問だ」
「おっしゃるとおりですね」
景隆は返す言葉がなかった。
詮人は困ったような顔をしており、柊は差し出されたコーヒーを優雅に飲んでいた。
「なにやら優秀な技術者がいるそうだが、当社はそれ以上に優秀な人材を抱えている」
(むっ!)
さすがの景隆も、この安堂の発言にカチンときた。
人材の質については負けない自負はあり、自分の仲間を侮辱された気がした。
「安堂くん、とりあえず彼らに課題を出してみてはどうかな?」
ピリピリとした空気で、詮人が提案してきた。
「そうですね……では――」
安堂は景隆と柊を値踏みするように見ながら続けた。
「スワンリビングという会社を知っているな?」
「はい」
スワンリビングは白鳥不動産の子会社で、不動産の仲介と管理を行っている。
現在、翔動が借りているマンスリーマンションも、スワンリビングから仲介された物件だ。
「当社では、スワンリビングのヘルプデスクシステムを受託開発しようとしている。
それを君たちに任せてみようと思う」
景隆と柊は、安堂からヘルプデスクシステムの概要や要件の説明を受けた。
(あれ? これって……)
「これを三ヶ月で作れと言ったらできるかね?」
安堂は挑発するように言い放った。
「柊」
「あぁ、いいぞ。お前の好きにしろ」
柊は景隆の意図が伝わったようだ。
詮人と安堂は会話もなしに意思疎通していた様子を不思議そうに眺めていた。
そして、景隆は自信満々に言い放った。
「一ヶ月で作ります」