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第121話 高層ビル

「ほえええええ」

竣工したばかりのビルを見て、景隆は目をチカチカとさせていた。


景隆と柊は白鳥の父、詮人(あきと)に呼び出され、日本橋にある高層ビル『日本橋白鳥ビルディング』のオフィスフロアに来ていた。

高層部は賃貸オフィス、低層階は商業テナントが入居する複合ビルで、商業区画にはKAKUTO日本橋の名称が付されている。


「柊くんが言っていた金融危機の話なんだが――」

詮人は深刻な表情で続けた。


「あれから白鳥銀行と、白鳥不動産(うち)が本格的に調査をしたんだ」


景隆は柊が言った内容が、放言であることを疑われることを危惧していた。

内容が事実であるかを知っているのは柊だけである。


「結論から言うと、システミックリスクが起こるとは言い切れない」

詮人の発言に、景隆の表情は強張った。


「しかし、MBSやCDOが急速に拡大しているのは事実だった。

したがって、金融危機が起きないとも言い切れないのは確かだ」


景隆は緊張が解けた。

(よく考えると、調査しただけで危機を予測できるなら、ショックなんて起きないよな……)


MBS(モーゲージ証券)は住宅ローンの元本や利子の返済資金を裏付け資産として発行される証券だ。

さらに、CDO(債務担保証券)を使い、MBSを複数組み合わせることで、リスクが分かりづらくなっているというのが柊の主張であった。


「白鳥グループには多くの従業員や取引関係者が関わっている。

危機が起こる可能性がある以上、経営者としてはこれを看過できないんだよ」

「おっしゃることはわかります」


景隆はデルタファイブの社員の何割かが路頭に迷うことを想像し、大変な事態になることは理解できた。


「ここで大事なことは、この危機が起こる可能性を我々よりも先に君たちが指摘してきたことだ」

「はあ?」


景隆は詮人の言わんとしている意図が汲み取れなかった。

隣の柊も同様なようで、首を傾げていた。


「危ういのは米国の不動産だが、国内の不動産市況にも相当な影響が出る可能性が高い」

「はい、そのとおりだと思います」


柊は実際に起きたことを体験しているためか、即答した。


「我々を上回る君たちのような情報力があれば、今後の危機が起こりそうな場合に先回りで対処できる」

翔動(うち)の情報力がほしいということでしょうか?」


景隆は詮人の意図が少しずつわかってきたが、まだ腑に落ちないことがあった。

(俺たちは何で、このビルに呼ばれたんだ?)


「具体的にはコンサルティングをしてほしい」


詮人の話では、白鳥不動産の調査部門と、その子会社であるSREテクノロジーズを連携させるプロジェクトを立ち上げるようだ。

SREテクノロジーズは、この日本橋白鳥ビルディングにオフィスを構えることになっている。


「報酬として、このフロアの一部を 翔動(君たち)が使うのはどうだろうか?」

「「ええええええっ!?」」

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