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第116話 観藤会2

「ほえええぇ」


景隆は人生で初めて乗った高級車に感激していた。

赤澤という運転手が運転する車内は、驚くほど静寂で、エンジンが存在しないのではないかと思われた。


「銃弾が飛んできても、跳ね返せそうだな」

「実際、危ない目にあったりするだろうから、本当に安全だと思うぞ」


柊の口ぶりはやたら実感がこもっていた。

(コイツ……もしかして、アクション映画みたいな経験をしているのか?)


「いったいどこに向かっているんだ?」

「藤陽荘というホテルでございます」


柊だけに聞こえるように言ったつもりだったが、助手席の黒田が答えた。

彼女はかなり耳がいいようだ。


藤陽荘は国際的な要人や著名人を招いた晩餐会や、将棋や囲碁のタイトル戦が行われるなど、格式が高いホテルとして知られている。


「白鳥不動産が経営しているホテルだ」

「白鳥不動産って」

「白鳥のお父さん――詮人さんが社長をやっている」

「なんか親しげな言い方だな。会ったことあるのか?」

「あぁ、ちょっとな」


景隆は柊と白鳥の関係が不可解に思えた。

柊と白鳥の接点は、単なる取引先の間からで、会った回数もごく僅かなはずだった。


(そういえば、会って間もない頃に白鳥の知り合いと話したと言っていたな……) ※1


←←←

『白鳥が今日のお前のように、急に問題を解決したことがなかったか?

ファームウェアが原因のトラブルだ』


『あーっ!あれはもしかして……?』

『俺の助言だ』


『えぇっ!柊って白鳥と面識あったの?』

『いゃ、柊翔太として面識ができたのは今日がはじめてだ――

白鳥の……白鳥の知り合いから相談を受けて、俺が解決策を授けてしまった』

→→→


柊が景隆の知らないところで、白鳥の関係者と何らかの関わりを持っていることは間違いなさそうだ。


現在、翔動の執務スペースとして利用しているマンスリーマンションは白鳥不動産の子会社、スワンリビングという仲介業者から格安で利用している。

景隆がスワンリビングに訪れた際にはVIPのような待遇を受けていることからも、柊と白鳥不動産の社長の詮人に何らかの接点があると推察できる。 ※2

しかし、柊の活動を鑑みても、白鳥不動産とのつながりを推理するのは難しかった。


「今日はどんな相手と会――」

「到着いたしました」


柊に説明を求めようとした景隆であったが、黒田の声によって時間切れとなった。


***


「白鳥尊人(たけと)だ」

(白鳥のじいさんか)


尊人は白鳥グループを束ねる、白鳥ホールディングスの会長だ。

白鳥家やグループ会社の関係者には『総帥』とも呼ばれている。

白鳥グループ総裁の権力や影響力は凄まじく、経済界や政界、学術界など、あらゆる分野に及んでいる。


(もしかして、総理大臣より権力あるんじゃないか……?)

まったく想定していなかった超大物を目の当たりにして、景隆は緊張を隠せなかった。


「柊くん、まずは礼を言わせてくれ。大切な孫娘を守ってくれて、本当に感謝している」

『『えええええっ!!』』


景隆は庭園の池にいる鯉のように、口をパクパクとさせていた。

景隆や柊の存在など、尊人にかかれば木っ端……いや塵芥くらいだろう。

白鳥家の総裁が自ら頭を下げている光景は、何かの見間違いとしか思えなかった。

※1 4話 https://ncode.syosetu.com/n7115kp/4/

※2 「芸能界に全く興味のない俺が、人気女優と絡んでしまった件」 123話 https://ncode.syosetu.com/n8845ko/123/

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