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第114話 BtoB

「問い合わせの数がすごいですね」

マンスリーマンションの一室で、下山はユニケーションに寄せられた問い合わせ内容を確認していた。


翔動はヘルプデスクシステムを構築していた。

ヘルプデスクシステムは、顧客や社内からの問い合わせやトラブルに対応するための情報管理システムだ。


ユニケーションのサポート体制は、問い合わせフォームを窓口としたメールと、チャットが用意されている。

サービス開始直後はメールフォームからの問い合わせが多かったが、今はチャットのほうが主流となっていた。

これは、レスポンスの早さと、気軽さがユーザーに支持されているためだ。


問い合わせの内容はすべてヘルプデスクシステムで管理されている。

柊の未来の知識を存分に活用した機械学習による自動分類機能などが実装されており、この時代では類を見ないほどの先進性を持ったシステムが構築されていた。


このヘルプデスクシステムは、サポートを委託しているエンプロビジョンの人員の生産性に大きく貢献し、問い合わせが多いにもかかわらず、最低限の人員で運用できていた。


「間違いなくテレビの効果ッスね」

竹野は番組の内容に感動したらしく、神代のファンを名乗るほどになっていた。


「対談の場で、『ユニケーションを企業でも使えるようにします』って大きく出てたからな」


柊は景隆が事前に打ち合わせていないことを言ったことに、特に責めたりはしてこなかった。

この発言がきっかけとなり、企業からの問い合わせが多数寄せられることになった。


「言ったからにはやるしかないわね」

新田も気にしていないのか、平然と言い放った。


「コピーを量産して売るだけでしょ? 利益率は高いんじゃないの?」

「上田の言うとおりなんだけど、セキュリティを強化したりとか、リーガルリスクを管理するコストがかかるな」

「顧問弁護士が必要になるかもね」

「そうだなぁ……」「うーん……」


景隆と柊は唸った。

景隆はもちろん、柊もこの時代では弁護士の知り合いはいないようだ。


利用規約や契約内容が不明確であったり、誤解を招く表現が含まれていると、後々のトラブルの原因となる。

業種によっては、特定の法律や規制に従う必要があるなど、課題は山積している。


「テレビの石動さんはカッコよかったです。デルタファイブの女性社員も話題にしていましたよ」

鷹山はまったく関係のない話題を振ってきた。


「え? そうなの? 俺見ていないんだけど」

「生放送じゃなくて、録画なのに?」

「自分が写ってる姿を見返すのなんて、恥ずかしくてムリ! 写真ですら苦手なのに」

「ええぇっ、もったいない……」

(鷹山は俺のことを二割増しくらいで盛る傾向があるから、評価は割り引く必要があるな)


『俺もムリだけど、石動のならギリ耐えられるな……』

(コイツ……俺ばかり表に立たせやがって……)

裏の仕事は柊にやらせているため、景隆は強く出られなかった。


「そういえば、放送を観た神代さんが不満そうにしていたな」

「え? なして?」

「技術的な話はほとんどカットされていたんだよ」

「うそ! 仮想化の話とかめっちゃしたのに」

「え? そんなお話していたんですか?」

「マジでカットされていたのか……神代さんとすごく盛り上がったのに……」


景隆は録画を観なくていいなと考えていると――

「今後のマーケティングを考えると、観ておかないと次で同じ失敗するぞ」

「ぐはあっ!」

すかさず柊に釘を刺された。


「カットは仕方ないですよね、一般の視聴者に受けるような内容じゃありませんし」

「ユニケーションのところを使ってくれただけでも、ありがたいか」


かくして、ユニケーションの企業向けサービス『ユニケーション for ビジネス』が誕生した。


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