表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
111/249

第111話 葛藤

「ちょ……なっ……ふぇっ?」

景隆は柊が何を言っているのかわからなかった――いや、言っていることは理解しているが、現実に落とし込めなかった。


「まぁ、順を追って話そうか」

「聞きたいような、聞きたくないような……」

「え、なんッスか? テレビ出たくないんッスか?」


竹野はテレビに出ることに抵抗はないようだ。


「神代さんのドキュメンタリー番組が企画されている。女優がIT業界の業務に関わっていくという内容だ」

「最近の活躍からすると、妥当な内容じゃない?」


上田からは、「断るんじゃないわよ!」という無言の圧力がかかっている。


「元は映画のメイキングで撮っていた映像を使ったりするらしい」

「Web Tech Expoにもカメラが入っていたけど、これも番組で使われるってことか」

「おそらくな」

「マジっすか! 自分も写ってるかもしんないッスね!」


竹野のテンションは最高潮だった。


「基本は神代さんの活動を追いかける内容なんだが、対談があるらしい。

そこに、神代さんが関わったIT企業の二社の名前が出ている」

「サイバーフュージョンと翔動ですね」


下山は何かを期待する眼差しで景隆を見ている。


「はわわ……石動さん、テレビデビューですかぁ。嬉しいような困るよな……」

鷹山はキラキラした目で景隆を見つめている。


「早く会社を大きくしてくれないと、半導体が作れないわ」

テレビには興味がなさそうな新田だが、思惑は柊と一致しているようだ。


「サイバーフュージョンは上村さんの出演が決まっている。ここまで言えばさすがにわかるだろ?」


柊はダメを押すように言い放った。

上村はサイバーフュージョンの社長だ。

そうなると、翔動が平社員を出すわけにはいかないことは小学生でも理解できる。


「ぐぬぬ……俺しかいないってことか……」


景隆は柊の考えていることが手に取るようにわかった。

会社を認知してもらうために、この企画は渡りに船であった。

同等のプロモーション効果を得ようとすると、巨額な費用を計上する必要がある。

経営者としての立場を優先するなら、ここで断る選択肢は存在しない。

今後、会社が大きくなった場合にメディアと向き合う必要もあるだろう。


(柊めぇ……よりによってこのタイミングかよ)

柊の狙いは明白だった。

この場の誰もが景隆の出演を望んでいた。

断りにくいタイミングを狙っての発言だということは明らかだ。

景隆の代わりに柊や新田が出演する目は、サイコロを何億回振り直しても出ないだろう。


「わ、わかったよ……出ればいいんだろ!」

景隆は投げやり気味に言い放った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ