第108話 Web Tech Expo 3
「うおおおおお」「きゃあああああ」
翔動のブースは熱狂に包まれた。
「的場です」「沢木です」
イベント二日目、翔動のブースには神代と美園が訪れていた。
的場は映画『ユニコーン』で神代が演じる役であり、同様に沢木は美園が演じている。
映画のプロモーションの一環として、映画の製作委員会のブースを訪れた二人は、そのついでに翔動のブースにも立ち寄っていた。
「ユニケーションには私たち二人が登場します! みんな見てくださいね!」
「くぁwせdrftgyふじこlp」
会場内の関心がユニケーションに集まった瞬間だった。
我先にユニケーションのデモに来場者が殺到し、収拾がつかなくなってきた。
「翔太、これを使って」
「あ、蒼さん。ありがとうございます」
柊の姉、蒼が柊に声をかけてきた。
蒼は広告代理店に勤務しており、映画の広報担当者だ。
「なにそれ?」
「整理券だよ。製作委員会のブースでは入場制限をするためにこれを配ったんだ」
「なるほど、ありがとうございます!」
蒼の助けと橘が手配したらしき警備員の働きによって、翔動のブースは落ち着きを取り戻した。
「石動くん、順調? ……わーお!」
鷺沼が外国人と思われる男性を連れて現れた。
「すんごいことになっているねぇ」
「はい、おかげさまで。理由はお察しのとおりです」
「Declan, he's Isurugi, a colleague of mine at Delta Five.」
「Pleased to meet you.」
鷺沼は約束どおり、計算機科学者、デクラン・パーカーを連れてきてくれたようだ。
景隆はデクランとがっしりと握手した。
デクランは大学で教鞭を執っていることもあるためか、知的な印象を受けた。
「石動、ここは任せて」
「お、おぅ、よろしく」
「Nice to meet you, Mr. Parker――」
景隆もデクランと話したかったが、伝える内容は新田と共有しているため、新田に任せることにした。
「思ったより統制がとれていますね」
「そうですね。橘さんが手配した警備員がすごく優秀で助かっています」
柊が鷺沼と話している様子を、景隆は複雑な心境で眺めていた。
柊にとってはかつての同僚であるが、鷺沼にとっては付き合いが浅い相手だ。
鷺沼が言うには柊と色々あったようだが――
「石動くん、サプライズイベントの準備できてるよん」
景隆は雑念を振りほどいて、次の仕掛けを準備した。