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第105話 カットオーバー

「今のところ、特に問題はなさそうだな」

景隆は胸をなでおろした。


翔動が提供するユーザー投稿型のeラーニングサービス『ユニケーション』がリリースされた。

これまでのベータテストでユーザーからも好評を得ており、品質面の問題もクリアされたことから、正式サービスに移行された。

マンスリーマンションの一室ではスタッフ総出で対応に当たっていた。


「問い合わせのほとんどは動画関連ッスね」

竹野はサポートのログを確認していた。

サポート業務はエンプロビジョンに委託しており、翔動のスタッフで対応状況に問題がないかを確認する体制だ。


「動画を編集できる人なんて、そうそういないわよ」

上田の言い分はもっともだった。

この時代では専門知識がない者が、動画を編集して投稿することは難易度が高かった。


「公式コンテンツの動画講座は見られている?」

「問い合わせした人の半分くらいは見ていますね」


柊の質問に鷹山が回答した。

動画編集から、投稿までの一連の流れを、無料の公式教材として用意していた。


「別に、動画じゃなくてスライドやドキュメントだけでいいんじゃないの?」

「そうだよなぁ、なんでだ?」


新田の感想に景隆は同意した。

この時代ではテキストや図が用意されていれば教材として認識され、あえて動画にする理由は思いつかなかった。


「なっちゃんの声ッスよ。みんな公式コンテンツを見て、真似したいと思ったんじゃないッスか。イラストもかわいいッス」

「たしかに、これを見ると同じようなものを作りたくなりますね」


竹野と下山は同じ意見のようだ。

(大河原の影響は思ったよりもすごいな……)


「それと、霧島プロダクションのコンテンツね」

「芸能人がやっていると真似したくなるもんな」


霧島プロダクションの教材はかなりの人気があり、教材を作るモチベーションにも作用しているようだ。


「思ったより、動画の需要が高いのがわかったのが収穫ね」

「どうするよ?」

「公式コンテンツの動画講座だけでは、足りないかもしれないな」

「動画作成講座の投稿を促せばいいんじゃない?」

「そうだな。上田の言うとおり、動画作成講座の評価が高い場合はポイントを上乗せしよう」


ユニケーションでは評価に応じたポイントが付与され、教材の購入時などでそのポイントが利用できる仕組みが導入されている。


「プロモーションはどうするつもり?」

「まずはWeb Tech Expoに注力する。

あまり手を広げると、どのプロモーションに効果があったかを判別しにくい」

「なるほど、ABテストも難しくなるわね」

上田の質問に柊が答えた。


「それと、急激にユーザーが増えるとスケールしにくいんだ」

「スケールって?」

「スケーリングとも言うが、システムの処理能力や容量を、需要の変化に合わせて調整するんだ」

「需要のピークが強すぎると過剰投資になるってことね」

「そういうことだ」


景隆の説明に対して、上田の飲み込みは早かった。

この時代では柔軟にスケーリングできる仕組みがなかったが、柊と新田の手によってある程度は対応できるようになっていた。


「その辺は下山さんのトークを聞けばわかるんだけど……」

「ブースが忙しくて無理ね……」

「うう、緊張してきました」


下山はWeb Tech Expoのトークで、仮想化技術を利用したスケーリングの手法を話す予定だ。


「段階的にプロモーションしていって、徐々にシステムを拡張していくのね」

「そういうことだ」


この最初のプロモーションが、()()()という次元ではなかったことを、この場にいる誰もが予想していなかった。


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