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第102話 半導体

「無理ゲーだろ」

景隆は断言した、柊が言っていることは別の惑星に行こうとしているくらいに無謀に思えた。


「石動、あんたチョコレートケーキを作る場合にカカオから育てる?」

「無理だろ……あぁ、なるほど、全部の工程をやるわけじゃないんだな」

「全部の工程をやるとなると千社くらいの企業を買収する必要があるな」

「石油王でも無理じゃねぇか……柊はどの工程をやりたいんだ?」

「設計じゃない?」


新田は柊の意図を少しずつ汲み取っているように見えた。


「特にロジック半導体の設計から製造までやるのは、下策中の下策なんだ。

俺の時代ではこの時代でCPUで覇権を取っている企業が凋落している」

「うそん……」


景隆が所属しているデルタファイブが提供しているサーバーは、自社開発のCPUから柊が言った企業のCPUにシフトしようとしていた。

それだけに、柊の発言は衝撃的だった。


「なんで、製造までやるとダメなわけ?」

「俺も聞きたい」


「半導体の技術革新は日進月歩で、微細化する度に製造技術を進めていかないといけないんだ。

設計から製造まで行うと巨額の設備投資負担が重しになったり、製造技術に柔軟性がなくなるなど、足かせが多くなる」

「ってことはファウンドリの企業が台頭するってことか」


ファウンドリとは自社で生産設備を持たない(ファブレス)半導体企業から委託を受け、半導体製品の製造を行う企業だ。


「そうだ、台湾のファウンドリ企業は半導体の分野で、全世界の時価総額で二位に付けている」

「マジか……トップは?」

「GPUの企業だ」

「やはりGPUなのか……」


この時代において、GPUはゲームなどの限らた分野でしか需要がなかった。

柊の話は、景隆の認識を根底から覆した。


「設計の話に戻るけど、難しいのか?」

「超超超超難しいわよ!」

「そんなに!?」

「GPUに関しては、開発だけで数千億円規模の投資が必要とされるとも言われる」

「無理じゃん」

「たしかにGPUをすぐに作るのは無理だ、だけど推論処理用の半導体なら国内のスタートアップ企業が開発している」

「スタートアップってどれくらいの規模なん?」

「三百人とかそこらくらいだったと思う」

「少しは現実的になってきたな。推論処理って何だよ?」

「生成AIはディープラーニングの一種という話があったよな」

「あぁ、あったな」

「モデルを作るのは学習処理で、そのモデルを使ってデータを解析し判断するのが推論処理だ」

「あ、そうか!」


新田は納得したらしいが、景隆はさっぱりだった。


「なんでそのスタートアップ企業は推論処理の半導体を作ったんだ?」

「モデルを作る学習処理は、ある程度時間がかかっても問題ないんだ」

「そりゃ、一度モデルを作ったらそれを使い回せばいいからな」

「だけど、そのモデルを使った推論処理に時間がかかったら?」

「あっ! ユーザーからすると、返事が返ってくるまでに時間がかかっちゃうのか!」

「来月のビールの売上予測のような数値だけを返す機械学習モデルと違って、生成AIは推論処理に膨大な時間がかかるから、その性能が重要なんだ」

「たしかに、柊が出してきた生成AIの回答には時間がかかっていたな」


「でも、推論処理のアーキテクチャも相当難しいんじゃないの?」

「もちろん、難しい。これはこれで考えていることがあるけど……とりあえず、できそうなところから始めようと思う」

「何ができるんだ?」


「新田が気づいたように、機械学習でGPUが活用されるのは、俺がいた時代では当たり前だったんだ」


景隆は改めて新田の凄さを実感した。

(まさか新田も未来人というオチじゃないよな……?)


「機械学習にGPUを使うところから始めるってこと?」

「そうだ、今の時代では機械学習がどれだけすごいかを誰も実感していない」

「ここにいる俺たち以外はな」


「それで柊は何をしたいの?」

「GPUが使えるということが世間に周知されれば、そこで開発や投資が活発に行われる」

「その時流に乗れれば、俺たちも大儲けできそうだな!」


景隆は柊が狙っていることがわかり始めてきた。


「そして、世の中の技術をどんどん前に進めていきたい」

「高尚な考えね」

「いゃ、単に俺が今の時代が不便で我慢できないだけ」

「そこかい!」

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