3話 THE WORLD AS SEEN BY OTHERS
目を覚ますと、見た事もない天井と医療用器具、点滴に囲まれていた。
「や、やっと起きた、大丈夫!?」
「姉さん…ここは?」
「病院よ。それより、どこも何とも無いわよね?医者さんはそう言っていたけれど、あなたのことは私と貴方にしか分からないもの。
桑は…桑自身は、どこかに異常がないかしら?」
早口で捲し立てるような言い方で姉は桑の手を握り、心配した。
姉はいつもこうだ。桑が些細な怪我や病気を患うと、ここまで過度に心配してくれる。
なにも嫌なわけではない。
ただ、すこし、その言動や雰囲気、絶望の表情に近しい表情がどこか不気味なのだ。
桑は姉を宥めるように大丈夫と言うと、姉は良かったと、満面の笑みを浮かべる。
桑はそこで、あることを思い出す。
「そ、そういえば、花常さんは…?」
「え?」
姉はぽかんと、した顔。きっと何も聞いていないのだろう。いや、当たり前か。
桑はベッドから立ち上がろうと、布団を捲った時
「落ち着けよ、桑。花常には多少の出血はあったが、無事だ」
「ば、バーゲンス先生…!」
バーゲンス先生は私服姿で桑の前に立つ。
白装束の姿の時や、その他諸々について聞きたいが、今は無事だった事を喜ぼう。
桑は背中から崩れるようにベッドに倒れる。
それと同時に、体のいたる所が痛んだ。
きっと、倒れた衝撃が傷に響いたんだ。
我ながらバカなことをしたなと思いながら溜息をついた。
「そういえば、バーゲンス先生、桑と彼女以外の生徒たちは…?」
「櫟さん、彼らは、もう…」
彼女と言うのは、おそらく花常さんの事だろう。桑は他の生徒達が、助からなかった事実に悲嘆する。友達と呼べる人が少なかったとはいえ、一緒に過ごした仲間だ。
失ってしまうのはあまりにも悲しすぎる。
「すみませんが、すこし席を外してもらってよろしいですか?
桑と少しお話があるんです。」
「で、でもバーゲンス先生…」
姉は若干の抵抗をしたが、バーゲンス先生の真剣な面持ちをみるとすんなりと従った。
先生は出て行った姉を見送ると、カーテンを閉めて、先ほどまで姉が座っていた椅子に座った。
「さて、桑。幾つか質問をしよう。」
「質問…ですか?」
むしろ質問したいのはこちらの方だ、と心の中で叫ぶ。
「あぁ、返答次第ではお前は死ぬ。」
いきなり、何処からともなく、桑のベッドの周りには複数の白装束が現れた。桑を取り囲む白装束たちは、桑に武器を突きつけた。
鎌、短刀、弓矢…多種多様だ。
桑は怯えて手を上げると、冷や汗を流しはじめた。
バーゲンス先生は桑に問う。
「まず、一つ目。"死徒"が見えてるんだな?」