第49話 I love...
───これは、SMクラブのアジトでで起こった戦闘の後日談───というか、後処理の話である。
俺がカスミを救い出してみーちゃんを家族に引き込んだ後、SMクラブのアジトから脱出することになった。
俺は、部屋を出た後に、麻酔で動けなくなった八戸八恵を回収しつつ、階段を登って地下1階にまで辿り着く。そこで、SMクラブの生き残りであり、屍屍と共に増援としてアジトにやって来たのであろう浜屋良和穏と邂逅したけれど、八恵と同じく俺とカスミを救出するために動いてくれた潔六角と神楽坂健司によって助けられたのであった。
───そして、俺達は瓦解したアジトの隙間を縫いながら、外に出る。
「───嘘」
そこにいたのは、左腕を切り取られた京子さんの姿であった。
「嘘...嘘、嘘!どうして!」
「純浦廉...さん。助かったのですね...よかったです」
アジトの門に腰掛けてそう座る京子さんは、今にも死にそうな口調でそう口にした。実際、周りには大量の血が流れていて今にも失血死しそうであった。
「京子さん、救急車は!」
「それどころじゃ無かったから呼べてないわ...」
「なんやて?そしたらもう、助からへんやないか!」
「私に任せて、レンお兄ちゃん!」
そう口を開いたのは、みーちゃん。焦りのあまり、頭から抜け落ちてしまっていたがみーちゃんの性癖は[ナース]である。
ナース・・・医者のようなことは何でもすることが可能。
「純浦廉さん、彼女は...」
「SMクラブの元メンバーです」
「───元?」
「はい、彼女は生まれながらにしてSMクラブのメンバーでした。だから、彼女は悪が何かわかっていなかったんです。だから、俺が...俺とカスミが責任を取って育てます」
「───そうですか。どちらにせよ、カスミさんのこともありますし暫くは『正愛』の監視下ですよ」
京子さんは、みーちゃんに治されつつそんな会話をしていた。
「京子さーん!僕、捕まえましたよぉ!」
そう言って、浜屋良和穏のオリジナルと思わしき人物を捕まえてこちらにやって来たのは、第12支部の最後の2人である小倉政宗と蜷局鮪翔子であった。
少年の方が[おね]の性癖を、女性の方が[ショタ]の性癖を持っているので、少し頭がこんがらがる。酸化剤と還元剤のような関係だった。
───そして、回復した京子さんが再度、その場の指揮を取りまだ帰ってこないメンバーのことで指示をしたのだった。
その結果、怪我はあれど全員が生存した状態でSMクラブのアジトの戦いを乗り越えたのだった。
───そして、一週間ほどの月日が経つ。
「ここが、純浦様方の新居となります」
「うわぁ、広い!」
[破滅]の能力を持ちSMクラブに3度も狙われたカスミと、元はSMクラブのメンバーだったみーちゃんを保護するため、俺達3人は『正愛』の監視下でクラスこととなった。
だけど、生活の一部始終を覗かれるという訳では無い。『正愛』に管理された土地で、『正愛』のメンバーに守られながら暮らすということだけだった。
みーちゃんの性癖によって、結果的にアジトに赴いた人物の怪我は全治していた。だから、俺は京子さんに連れられて新居にまでやって来ていたのだ。丁度、戦闘で壊されていたし丁度良い。
「これから、俺は働かなくてもいいんだろ?いや、働かないっていうか近くでの監視という名目なのだが...」
そう、俺がカスミとみーちゃんという2人の保護対象と共に成長するのは、監視という名目であった。
カスミの恋人であり、みーちゃんの保護を口にした人物である俺は一番近くでの監視として共に生活することを命じられたのだった。
それは要するに、職場に行かずに働かなくても給料だけが貰える───という訳だった。
「別に問題ないですよ。SMクラブを解体にまで陥れたんですから。一生遊んで暮らせるほどのお金が渡されてもいいくらいなんですから」
「───そうなのか?」
俺は、自分自身の為に戦っていたから、そんな自覚はなかった。それに、全てはたった一週間ほどの出来事なのである。
「いいじゃん、廉。これからはずっと一緒に過ごせるんでしょう?」
カスミが、俺に向けてそう言ってくる。みーちゃんは、もう早くも新居の中を走り回っているようだった。
俺も、部屋の中に入ろうかと思ったところで───
「「レン」」
俺は、2人の人物に名前を呼ばれる。俺が振り向いた先にいたのは、ほのかとケイの2人の姿であった。
「ほのか、ケイ」
「今日から、もう職場に来ないようだね」
「レンがいると、煽れる人がいなくなってつまらなくなるにゃあ」
「ごめんな、俺も仕事で...」
「寛大な僕が、レンに嫌味を言いに来たわけ無いだろう?おめでとう。それを伝えに来たんだ」
その言葉と同時、ケイが俺に花束を渡してくる。
「これは...」
「左遷祝いだにゃ」
「左遷って...」
言い方は、凄く嫌味を感じたけれどほのかだからそんな言い方をしてもおかしくはない。
「特段良いことは言えないけれど、ありがとう。レンはいい男だよ」
「ありがとう、ケイ」
「レンとはまぁ、色々楽しかったにゃあよ。たまに、顔を見せてくれると嬉しいにゃ」
「暇な時にはちょっかいかけてやるよ」
「その時はプリンを忘れないで欲しいにゃ」
「───善処する」
「ほら、2人共。話が終わったら仕事に戻りますよ。支部には2人しかいないんですから」
「「はーい」」
京子さんを先頭に、2人は帰っていく。俺は、3人の後ろ姿を見ながらずっと手を振り続けた。
そして、姿が見えなくなって俺は新居の中に入っていく。
「お別れは終わった?」
俺が新居のリビングに入るとカスミにそう聞かれた。
「別に、お別れってわけじゃない。会おうと思えばすぐに会えるからな」
「───寂しそうね」
「ちょっとな。騒がしい奴らだけど、大切な仲間だからよ」
「───そう」
カスミはそう言うと、ニコリと微笑んだ。
「───私、レンのそういうところが好きだよ。仲間思いなところ」
カスミがそう言うと、俺に迫ってくる。
「愛を貫いてくれるから、私はレンのことが大好き」
カスミはそう付け足し、少し背伸びをして俺にキスをした。
「俺も大好きだ」
カスミが口を離した後に、俺もそう口にして、再度カスミとキスをしたのだった。
簡潔に完結のお知らせをします。
完結しました。




