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第31話 最後の2人

 

「レン!おい、レン!」

 屋敷の中から現れた、鮮やかなピンク色をした触手。先程、斎藤国重が戦った触手と同じ姿形をしていた。


 一瞬の早業で、レンを拐われてしまい国重は何も対応できずにいたのだった。

 レンを捕まえた触手を燃やす───ということも考えたが、レンも一緒に燃やされてしまう可能性もあったのですぐにその案は頭の中から消えた。


 結果として、レンを救うことはできずに誘拐されてしまったのだ。

「クソ、本格的にマズくなってきたぜ...」

 国重は、そう口にする。彼は、いつも冷静沈着としていてドンと構えていたが、それでも仲間が誘拐された今は焦りが存在していた。


「落ち着いてる場合じゃねぇ、一分一秒が命に関わるだろうよ」

 国重は、スマホで『正愛(せいあい)』第8支部のメンバーに連絡を取ってから、レンの属している第12支部の京子に連絡を取った。


「もしもし、俺だ。国重だ、聞こえるか?」

「はい、斎藤国重さん。聞こえています。どうかしましたか?」

「今から言う場所に全員で来い。レンがピンチだ」

「───わかりました」


 ───そして、国重は京子に今いる住所を伝える。


「そこに向かえばいいんですね」

「あぁ、そうだ。大きな戦闘が起こるだろうよ」

「了解しました。こちらが到着するまで、どうかご無事で」

「応」

 そして、国重は電話を切った。


「───さて、どうするか...」

 国重は思案する。確実に敵が蔓延っているであろう敵のアジト前にして、数時間後の未来にあるであろう大激戦の末を見据えていたのだった。


 ───その額に浮かぶ汗と、タバコを吸わなくなった国重の行動が、その危険性の全てを語ってくれていた。


 ***


「猫又ほのかさん、鳴沢慧(なるさわけい)さん。再度戦闘の準備をしてください」

 国重からの電話を受けた京子は、既にアジトに帰ってきていた2人にそう声をかける。


「残念だけど、にゃあは事務処理で忙しいにゃあ」

「勤勉な僕も同じだ。外に出ているレンに任せられないのか?」

「無理です。純浦廉さんが誘拐されました」

「───え?」

「───は?」


 京子からのカミングアウトによって、ほのかとケイの2人は驚きが隠せない。

「誘拐だって?あのレンが?」

「ありえにゃいにゃ。レンはそこまでドジじゃにゃいにゃん」


「ですが、誘拐されたと報告があります。ですので、向かわなければいけません」

「しょうがにゃいにゃあねぇ...猫の手も借りたいって言うのなら、仕方なくにゃあが手を貸してやるにゃあよ」

「仲間思いの僕も手伝うことをここに表明しよう。先の話は聴いている。確か───そうだったよな、ほのか」

「そういえば...そんなこともあったにゃあね」

「そんなこと?何の話です?」

 2人が話し合っているのを聴いて、京子の頭の上にはクエスチョンマークが浮かび上がる。


「にゃはははは...猫の手を貸してやるから借りは返してもらうにゃあ」

「優しい僕でも、対価は必要だ。そう!」

「「救い出した暁には最高級プリンを買ってもらう!」」

 2人の声が揃う。こういう時の2人は、しっかりと協力できるようだった。


「はぁ...くだらないこと言ってないで、早く行く準備をしてください。レンさんが死んでしまいますよ」

「わかってるにゃ!やるならば全力でやらせて頂くにゃ!」

 そう口にして、まるで遠足に行くかのように嬉々として戦闘へ向かう準備をするほのかとケイ。


 ───そして、2分もかからずに2人は準備を終えて京子の運転する社用車で教えてもらった住所にまで向かうことになった。


「それじゃ、出発だにゃ」

「京子さん、お願いします」

「運転は任せてください。2人も戦闘は頼みますよ」

「もちろんだにゃ!」

「昼も夕も戦うのは大変だけど...仲間がピンチの時にそんなことを言ってられないからな」


 ───2人の言葉を聞いて、京子は車を動かす。


 京子は法定速度を守って、国重に指定された住所まで走っていったのだった。

「───と、そうだ。ケイさん、現在張り込み調査に行ってくれている2人に連絡を取ってください」

「了解した、有能な僕に任せてくれ」


 そう言って、ケイはスマホを取り出して京子の言う()()に連絡を取ることを試みる。


 ───『正愛(せいあい)』東京第12支部の最後の2人のメンバーもここに招集されるようだった。


 ***


正愛(せいあい)』東京第12支部の残り2人の内の片方のスマホに電話がかかる。

「お姉ちゃん、ケイ先輩から電話がかかってきたのです!」

「あら、教えてくれてありがとう。可愛いね、本当に」

「えへへ、ありがとうなのです!」


 スマホを「お姉ちゃん」と呼ぶ人物に渡した人物は、まだ中学校に進級すらできてい無さそうな少年。その少年が「お姉ちゃん」と呼ぶのは、二十歳を越えた───要するにレンと大体同い年だろうと言える女性だった。

 この2人は、いつでもどこでもペアとして行動している。


 ───と、ここまでくれば察しのいい人はもうお気付きだろう。


 そう、『正愛(せいあい)』東京第12支部の最後の2人の性癖(ラヴィット)



 ───それは[おねショタ]であった。

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