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第3話 敵の縄張り

 

「ここ、か...」

 俺と、猫又ほのかの2人が到着したのは1つの倉庫だった。どうやら、ここに田村一家殺害事件の犯人がいるようだった。


 田村一家殺害事件が起こったのは、2日前。

 4人家族の田村家の中で、3人の死体が発見されていた。見つかっていたのは、長女の田村花という17歳の女性らしい。3人の死因は、首を絞められたことによる窒息死だとされている。


「レン〜、やっぱり帰ろうにゃん...にゃあも仕事なんかしたくないのにゃあ...」

「うっせぇ、しっかりと働け。とりあえず、相手に気付かれずどう侵入するか───」


「───道場破りだにゃあ!にゃあと勝負するんだにゃあ!」

「おい、勝手に入っていくんじゃねぇ!」

 猫又ほのかこと、バカ猫は勝手に倉庫の中に入っていってしまう。


「あ?お前ら、何者だ」

 そこにいたのは、合計6人の男性。その奥に見えていたのは、紺色の制服を着た、縄で手足と口を縛られて塞がれている女性だった。

 死体が見つからなかった、田村家の長女───田村花さんだろう。田村花さんであろう人物は、涙を流しそうな目でこちらを見ていた。


「クッソ、正面突破しやがって!」

 俺は、ほのかにそう悪態をつきながらロケットペンダントの中に写っている、恋人であるカスミの写真を見た。


 別に、写真なんか見なくても[純愛]の能力は使用できるのだけど、能力を安定させるために見ているのだった。

 俺の手に現れるのは、黄色く発光したエネルギーの塊である日本刀だった。このエネルギーは、愛のエネルギーだ。


「しょうがねぇ、[ケモノ]!戦闘準備をしろ」

「えぇ〜、全部レ───[純愛]が叩き切ればいいと思うにゃん」

「お前の仕事に俺は付いてきたんだよ。俺は最低限のことしかしねぇ」

「しょうがにゃいにゃあ...」

俺達は、『正愛(せいあい)』のメンバーであり、現場ではコードネームで呼び合っている。相手が名前を知った人物に何かを起こす性癖(ラヴィット)であった場合への対策だった。


「兄貴、『正愛(せいあい)』の輩ですぜ!」

「お前ら、相手してやれ!」

「「「了解 (なのぜ)!」」」


 兄貴と呼ばれていた人物が、今回の主犯格でありこのメンバーのボスなのだろう。その人物は、子分5人を俺達の方へ向かわせてきた。ほのかの方には4人。俺の方には1人。


「[ケモノ]!」

「あぁ、はいはい!やるにゃあよ!その代わり、プリンはにゃあの物だにゃあ!」

 そう言うと、ほのかは持ち前の爪でと、その俊敏な足で連続して2人に攻撃する。


「───ぐあッ!」

「よくもッ!」

 男達はきっと、今後一生胸に3本の斜め線が残るだろう。まぁ、悪いことをした制裁だし、背中ではないから剣士の恥ではないし問題ない。


「俺が相手なのぜ!」

 目の前にいるのは、主犯格のことを「兄貴」と呼んでいた男。

「食らえなのぜ!」

「あーもう、なのぜなのぜうっせぇな!」

 その男が持つバタフライナイフのようなものを、軽快な動きで俺は避けた。そして、俺は刀を振るう。


「お前はゆっくり解説の黄色い方かよ!」

「ぐああーなのぜ」

 そう言うと、黄色い方 (別に黄色くはない)はその場に倒れる。


「にゃはははは!にゃあが最強なのだにゃあ!おい、レ───[純愛]!見ていたか!」

「すまん、見てなかった」

「にゃんですと?!」

 どうやら、ほのかの方も4人の子分を倒すことに成功していたようだった。子分は、性癖(ラヴィット)を使用して来なかったけれど、戦闘用の性癖(ラヴィット)ではないのかもしれない。


 というか、同じ性癖でも、どんな能力になるかは変わる。

 俺と同じく[純愛]が性癖の人を見たことがあるが、性癖(ラヴィット)は俺と微妙にズレがあった。


「ふん、俺の手下を倒すとは...一筋縄ではいかないようだな」

 そう言って、兄貴だと呼ばれていた人物はゆっくりと立ち上がる。そして、誘拐した田村花さんを自分の近くに寄せて、人質にしていた。


「お前らはコイツを助けに来たんだろう?なら、そっから動くんじゃねぇ。コイツを殺されたくはないだろう?」


 兄貴と呼ばれる人物がそう言うと、ソイツの右手人差し指から縄に変わって、伸びていく。

「お前...(名は)?」

「名前か?しょうがねぇ、五月蝿く聞かれても困るから潔く教えてやるよ。俺の名前は長縄丈(ながなわじょう)だ。お前等を殺す男の名を、覚えとけや」


 直後、右手を大きく振るう。人差し指は、非常に長い縄に変わっていた為に、俺達の方にその縄が飛んでくる。


「これなら斬れる」

 俺が両手で持っている刀を振ると同時。


「───ッ!」

 俺の縄に纏わりついてくる縄だった。縄は、刀で斬れること無く、巻き付いてきたのだった。

「残念だったな、俺は自由自在に縄を操れんだよ。お前の刀で斬れるほど、俺の縄は弛んでねぇ」

「クッソ...」

「にゃあが自慢の爪で助けてやるにゃ!」


「おい、馬鹿!今の話を聞いて縄に触れるのは愚行過ぎるだろ!」

 俺が止めるより前に、ほのかは縄に捕まってしまう。どうやら、どれだけでも縄は伸ばせるようだった。


「いにゃーん、捕まっちゃったにゃーん」

「この、バカ猫!」

 俺は、一度能力を解除して刀を消してから、再度作り直す。そして、縄がまとわり付くことも許さないほどのスピードで、ほのかを捕まえていた縄を切り落としたのだった。


「助かったにゃあ!」

 そう言うと、四つ足で長縄丈の方へ走っていく。


「───マジかよッ!」

「先手必勝!先手じゃにゃいけど!」

「クッ!」


 ほのかの、半ば特攻に近い急接近によって、長縄丈の胸部から腹部にかけて、数本の爪痕が付くことに───、



「にゃ、にゃに?!」

 人質として捕まっている田村花を器用に避けたほのかの爪によって、長縄丈の服が破ける。そこにあったのは、より強固な縄で亀甲縛りされていた胴体だった。


「危ない、縄の防護服を着てなかったら死んでたぜ...」

 そう言うと、長縄丈の指の1本1本が縄に変わっていく。さっきまでは、1本だけだったが、今回は一気に10本を相手にしなければいけないようだった。


「お縄にかかる訳にはいかねぇからよ...お前らも死んでくれや」




[緊縛]の能力・・・自分の指を縄に変えて、自由に操ることが可能。

第4話、本日20時に更新します!

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