第13話 おみやげショップ
俺は、背中を突こうとしてくるペリカンのことを避けつつ、狙うのは屋内となっているおみやげショップであった。そこならば、遠くにいる敵に自分の場所を教えなくて済む。
とにかく俺は、接近戦を得意にしているし近接戦闘しかできないから、相手を呼び寄せられれば万々歳だ。
これほどまでに俺を執拗に狙っているということは、もしかしたら俺が過去に逮捕した人物と関連があるのかもしれない。
もしかしたら、SMクラブの一員かもしれない。それならば、かなりの強敵であるだろう。
「SMクラブなら、完全に逆恨みだと思うんだがッ!」
俺はそう口にしたと同時に、前方に飛んできていたペリカンを避ける。この動物達は操られていて、被害者だ。いや、動物だから被害「者」ではないのか?
まぁ、どうでもいい。
この動物達が悪い、殺処分されるべき───という訳では無い。
俺は、ペリカン達が傷付かないように走り抜けることしかできなかった。シャチに関しては、俺にはどうしようもできなかった。シャチの巨躯を持ち上げて、水槽に戻す筋力も時間もなかった。
───と、俺はそのペリカンを避けるのを最後におみやげショップの中へと入っていった。
「お、お客様?」
「店員さん、すみません。何者かが俺達に攻撃を仕掛けてきています」
「───は、はぁ?」
カスミをお姫様抱っこして、魅せの中に入った俺。その女性店員さんは、何が起こったのかわからないだろう。
「動物を操る性癖を持つ人物に狙われて攻撃されてるんです!どこから現れるかわかりません!危険なので離れていてください!」
基本的に、建物の中にいれば安心だろう。俺は、外から見れないように店内に進んでいく。きっと、戦闘になるのであればカスミは近くにいないほうが安全だろう。
「カスミ、店員さんと一緒に」
「わ、わかった。レン...怪我しないようにね」
「もちろんだよ。死にたくもないし死ぬつもりもないし、死んでカスミを一人にするつもりもない」
「───頑張って」
「応」
「店員さん、ここは隠れましょう」
「───は、はい...あの...あちらのお客様は?」
「大丈夫です。レンは───彼は『正愛』の所属ですので」
「『正愛』の...」
その店員さんは、どこか納得したかのような顔をして後ろに下がっていく。そして───
「ぃよしッ!生き馬の目を抜くに成功っす!」
「んなッ!」
その店員は、カスミに抱き寄せた後にそのまま背中に担いで走っていってしまう。
「───んなッ、マジかよッ!」
俺はてっきり、能力主は外にいるのかと思っていた。だけど、違った。
───今回の相手は、この女性店員であったのだ。
「お前、何が目的だよッ!」
「目的が達成された今、教えてやらなくもないッス!私の目的は、先輩の───胡蝶先輩の仇を取ることっす!」
「───ッ!お前、SMクラブか!」
「正解っす!」
その、いかにも後輩と言った口調で話す女性店員。先程までの行動は、全て”嘘”だったのだ。
そのまま、その女性店員は外に逃げていく。
「いやぁ、騙すのは屁の河童っすね!もう、この水族館に滞在する意味もないっす!」
そう言って、おみやげショップの外に出ていく女性店員。
今思えば、人がほとんどいない水族館なのに、おみやげショップの入口前で滞在していたのもおかしかった。それに、シャチが水槽から飛び出てきたのであればもっと焦ってもいいはずだった。このおみやげショップは、中から外が見えるような形になっているのだから、チラリと見ればすぐわかると言うのに。
「カスミを、返せ!」
俺は、[純愛]の能力で刀を作り出す。そして、走って逃げるその女性店員に接近した。
───が、おみやげショップの外に出た俺の進行を邪魔するように飛んでくるのは3匹のペリカンだった。
さっきペリカンを追い払わなかったせいで、その女性店員に逃げられてしまう。先日の事件では、わざわざ胡蝶が俺の目の前に来て誘拐したカスミを背負ってノコノコと戻ってくれていたから良かったけれど、今回はそういう訳にも行かないだろう。ここを逃してしまえば、カスミは完全に攫われてしまう。
「カスミ、能力は使うなよ!」
「───え、あ、うん!」
カスミは、焦ったり気が動転したりすると能力である[破滅]を使用する可能性があった。
[破滅]は、相手を死に追い込むほど強いけれど、その代償としてカスミ自身も死亡してしまう。だから、能力を使わないように念押ししておく必要があったのだ。
俺は、刀を大きく振ってペリカンに威嚇してみるも、操られているので一歩も引くような動作を見せない。
「───すまない、大人しくしていてくれ」
俺は、できるだけしたくなかった方法で、ペリカンを抑えることにした。
”ガンッ”
ペリカンに峰打ちすると、その1匹はバサリと地面に落下していく。殺してはいない。失神だ。
俺は、残りの2匹にも峰打ちをして動きを止めた。
「今度こそッ!」
───と、俺がカスミを誘拐した女性店員を追いかけようとした頃。
「私は尻尾を巻いて逃げることにするっすよ!いたちごっこはやめましょう!」
そう言って、飼いならしているであろう大型の猛禽類に腕を掴ませて空を飛び立とうとしている女性店員の姿。その腕には、しっかりとカスミがあった。
「レン!」
「させっかよ!」
俺は、手元にあった[純愛]のエネルギーでできた刀を、その猛禽類へ狙って投げた。
最近、虎口を逃れて竜穴に入るような災難が立て続けに起こっている。
そんなことを思ったと同時に、その猛禽類の大きな翼に刀が刺さってのであった。
逃がしはしない。




