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第10話 水族館

 

 ───ということで、翌日の10時程。


 電車で一時間ほど揺られたところで俺とカスミは水族館に到着した。

 月曜日だったし、ラッシュの時間は避けたので電車は空いていたし、焦ることもなくここまでこれた。


 俺達がいるのは、東京某所に存在するサンパワー水族館だった。

 サンパワーは水族館は、魚以外にも鳥や水辺の生物等も見れる大きなところであるし、一緒に行ったこともなかったので行くことにしたのだった。


 俺とカスミは目一杯のおしゃれをして、ここまで来ていた。

 月曜日であり皆は仕事であるからか、学生の姿はほとんど見当たらなかった。


「水族館なんて、懐かしいね」

「そうだね。まぁ、最近は近場でしかデート出来てなかったからね」

 まだ入館するどころか敷地の中にすら入っていないのに、俺達は昔を懐かしむような話をしていた。


 一応、東京スーパータワーの近くにある水族館には一緒に行ったことがあるけれど、他の水族館はなかった。

 動物園や水族館・植物園等の生物を見に来ること自体が久しぶりであったし、気分転換には持って来いだろう。


「なんだか、大学生の時を思い出しちゃう」

「そうだねぇ。あの時はデートもたくさん行ったしなぁ」

 過去を思い出すような発言が続くが、過去回想に入ろうとは思わない。


 ただ、俺達の最初の出会いは大学とだけ言っておこう。そのくらいの前情報は必要だろうし。

「あ、私チケット買ってくるね」

「一緒に行くよ」

「ありがとう」


 俺達は水族館に到着して、チケットを買いに行った。大人が2枚だ。

 やはり、平日であるし水族館は空いていそうだった。今日は、水族館以外の予定は作っていなかったし、ここでゆっくりして行くのも悪くはないだろう。


 そう思いながら、俺達は水族館に入館する。1階が、魚のゾーンだ。

 入ってすぐのところにあるのは大水槽。


 まるでここが水中だと勘違いしてしまいそうなほど巨大で圧倒的な水槽がそこには存在していた。

「綺麗...」


 水槽の中で泳いでいるのは、多種多様な魚。十人十色の───いや、魚だから十魚十色だろうか。どちらでもいいが、千差万別の魚が縦横無尽に水槽の中を泳いでいた。


 水中の底付近で停滞しているずんぐりむっくりな魚だったり、水槽の真ん中を悠々と泳ぐエイ。そして、群れて泳ぐキラキラと光る青い魚。


 トップを飾るに相応しい水槽が、俺達の目の前には広がっていたのだった。水族館の中は、日光を忘れて水の輝きと、足場を仄かに照らす青いライトだけが頼りだった。

 そして、2分ほど眺めた後に俺達は次の水槽へと足を進める。


 巨大水槽を迂回するようにして、左側の進行ルートへ進んでいった俺達を歓迎するのは、不定形のクラゲ達であった。大小様々なクラゲが水の中を揺蕩いながら、俺達を出迎えてくれた。


 大きいクラゲに小さいクラゲ、触手が長いクラゲに見当たらないクラゲ。銅のような色がついたクラゲに無色透明なクラゲまで様々なクラゲを見ることができた。

 四つ葉のクローバーのような形を頭に浮かべて水中を空中のように浮かんでいた。


 足元に浮かんでいる濃い青色の照明を頼りに、俺達は次のところへ進んでいく。

 そこに待ち望んでいたのは、大量のマグロの水槽だった。


 右から左へと流れるように泳いでいるマグロ。永遠に止まらないマグロを目の前に、俺は「圧巻」の2文字を覚えた。「鉄火巻」の3文字ではない。「圧巻」の2文字だ。


「───マグロって、死ぬまで泳ぎ続けるんでしょ?すごいね」

「死ぬまで泳ぎ続けるの、俺達からしてみると結構えげつないよな。人間だって、1日中歩き続けるってだけでもかなり疲れるのに」


 俺達は、そんな会話をして水族館を満喫していった。

 時が経つのを忘れて、俺はカスミと過ごす時間に集中していた。


 魚ゾーンも終わり、俺達は水辺に住む生物達のいるゾーンにまで進んでいた。もう、水族館の1/3を見進めていたようだった。

 アザラシやジュゴン・トドといった水の中に住んでいる哺乳類だったり、爬虫類である亀や両生類であるカエルなどを見た。昆虫ゾーンも少しあったけど、カスミがビビっていたのでそこは飛ばした。

 ちなみに、このゾーンにイルカはいなかった。どうやら、これから行く屋外ゾーンにイルカやペンギン等はいるようだった。


 まぁ、ショーもあるし外のほうがやりやすいのだろう。

 そんなことを思いながら、俺達は屋外へ向かうためのエレベーターに乗った。


「水族館、楽しいね」

「うん、そうだね」

「───あ、お昼。どうしよっか?」

「どうしようね。近くに美味しそうなお店...あるかな」

「お寿司屋さんとかどう?」

「魚を見た後に寿司食べるの?」

「駄目かな?」

「駄目ではないと思うけれども...」


 もしかしたら、カスミは水族館に行っても感想が「美味しそう」なタイプだったのかもしれない。

 そんなことを思いながら、俺達は屋外ゾーンに辿り着いたのだった。





 ───と、そんな2人を影から見ていた水族館に闖入した人物。


「先輩。見つけたっすよ、胡蝶先輩を倒した相手を...」

 隠れながら、先輩と呼んでいる人物に電話している倒置法を使用している男性。


「はい、わかりました...私が相手するっす。蟹は甲羅に似せて穴を掘る───って言いますし、塞翁が馬っす、頑張るっす!」

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