表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で子育てはじめます。  作者: 夜涙時雨
5/43

5.一歩を踏み出したと思いきや早々に戦闘開始

神様が去った後、貰った本をカバンにしまい改めて辺りを見てみる。

森の中でも拓けた場所だからか、空を見上げると太陽の光が目に入る。

太陽の位置的にきっと昼辺りなのだろう。

神様から色々な力や知識を貰ったとはいえ、異世界についてはまだまだ分からない。

魔物も出ると言っていたし、異世界に来たばかりで森の中で夜を過ごすのは嫌だ。

取り敢えず、歩いて森から出てきちんとした道を探そう。

水の音は聞こえないかな?

もし、水の音が川であれば、川の流れに沿って歩けばいずれは人がいるであろう街にたどり着けると思うし……川とか流れてないかな?

動物とか魔物に気をつけながら、耳を済まして歩こう。

拓けた空間から外れて、森の中へと踏み込んだ。




どのくらい歩いたんだろう?

時計がないから時間の感覚が分からない……でも、まだ太陽は頭上にあるから夜になるまでは時間がありそうではある。

自分がどこを歩いているのか分からないままひたすらまっすぐ歩いていると、小さくパシャンッという水が跳ねる音が聞こえた。

もしかして……!

聞こえてきた音に期待を込めて、水音がした方へ足を進める。

進むにつれて、水音ははっきりと聞こえてきた。

30分くらい草木を掻き分けながら進むと、目の前に小さな川が表れた。


「よかった!川だ!」


川を見つけられたことで安心し、少し肩の力を抜いた。

どのくらいかかるかは分からないが、この川に沿って歩いていけばいずれ人がいる場所に着くはずだ。

川を見つけたついでに川に反射した自分の姿を見てみる。確かに見た目は若返っており、元々黒だった目と髪の色は目は青みがかったグレー色、髪はミルクティーのようなベージュ色をしていた。

色味が変わっていて少し違和感はあるけど、派手な赤とかピンクみたいな色じゃなくて良かった。

一安心したその時。


「グルルルルルル……」


近くから獣の唸り声が聞こえた。


「……!?」


まだ姿は見えない。 でも、気配は感じる。

川を挟んだ向こう側の茂みに意識を集中させると、5体の魔物がいることを認識した。

なぜ、姿は見えないのに数が分かるのか。

疑問には思ったが、きっと神様の加護のおかげだろう。

あちらもこっちを警戒しているようだ。

魔物といってもすぐに飛びかかってくる訳ではないらしい。

気配がする方を睨みつけ、身構える。

茂みがガサッとなったと同時に闇を纏ったオオカミのような魔物が5体飛び出してきた。

幸いなことに川幅がまあまあ広いからか、すぐにこちらに飛びかかって来る様子はない。

でも、川を挟んだ向こうで、俺を襲う気満々な様子で逃がしてくれる雰囲気はない。

5体とも喉を鳴らしながら川をどうやって渡るか模索しているようだ。

さて、逃げられないとなれば戦うしかない。

武器は剣を神様からもらっているので異空間から取り出せばあるがこの距離で剣を使った所で当たるわけもない。

遠距離の武器として弓があれば良かったのかもしれないが、あったとしても使った経験がないからきちんと当たるかも分からない。

そうなると、今使えるのは魔法になるのか。

こっちも使ったことはないけど、神様が言うには想像する力があれば使えるらしいし、今後のことを考えて使ってみるか。

でも、どんな魔法を使えば良いのか……。あのオオカミが何という魔物で弱点とかが分かれば良いんだけど……。

オオカミを見つめながら、鑑定とかできないのかなと考える。

すると、頭の中に目の前のオオカミはブラックウルフが魔物化したもので、火と風魔法が有効というのが浮かび上がった。

これも魔法なのか。

鑑定したいと考えただけで、本当に鑑定できるなんて!

感激しつつ、余裕はないことからどう攻撃するかを考える。

鑑定した結果、火と風の魔法が有効となっていた。

火は川はあるけど、周りは森でもしコントロールが失敗して山火事のようになったら大変だ。そうなると風魔法だな。

刃のような鋭い風で切り裂くイメージをする。

すると、自身の体が少し暖かくなり何かが体の中を巡っている感覚がしたと共にその何かが体から抜ける様な気がしたと同時に俺がイメージしたような風の刃がオオカミ達に飛んでいった。

風の刃は次々とオオカミを切り裂き、オオカミ達は逃げようとしたが為す術なく、切り裂かれ倒れるとキラキラと消えていった。

魔物は死んでも死体は残らず消えるみたいだ。


「よかった…」


オオカミ5体が全て消えるのを確認し、ホッと息をつく。

そういえば、前世で翔太が見てたアニメでこんな戦いのシーンがあったな……。

翔太は幼い頃から漫画やアニメが好きで仕事が休みの日はよく一緒に見てたななんてことを思う。

前世では生き物を殺す経験なんてしたことはなかったけど、特に躊躇いとかは感じなかった。

前世で経験はないとはいえ、漫画やアニメなどで見たことがあったからか。魔物だったからか。

今は魔物だったけど、これがもし人だったら?

神様から聞いた話だと地球よりも文明は発達してはおらず、賊もいる。

ということは、いつか賊に襲われることがあるかもしれない。

その時、俺は賊とはいえ、人を殺めることができるのか?

きっと、躊躇なくやるだろう。

躊躇したら自身の命はない。

いくら、前世で動物や人を殺める経験はなかったとはいえ、武術を嗜んでいた。

武術は幼い頃からやっていたが、その時の武術の先生、いや、師匠が言っていた。

現代では武術を身につけたとして実際に使う機会はほとんどない。だが、何が起こるか分からないのが人生というもの。武術とは人を傷つけるのではなく、誰かを、そして自分を守るために使うものだ。武術は人を傷つけるものではないと言ったが、そうはいかない時もある。必要によっては相手の命を奪わねばならないこともあるかもしれない。その時は躊躇ってはいけない。躊躇ってしまえばこちらがやられる。武術は守るために使うもの。大切なものを守るために必要ならばそれが誰かの命を奪うことであっても躊躇うな。奪っても後悔はするな。守ると傷つけないは同義ではない。勘違いするな。武術を嗜む者として忘れるな。

師匠は稽古の度に皆にそう言っていた。

稽古を受けている人の中には、師匠の話を理解できず馬鹿にするような人もいた。

俺も当時はあまり理解できなかったけど、今なら分かる気がする。

武術は人を傷つけるために使用してはならない。でも、自分の命や大切なものを守る為ならば躊躇なく、相手を殺すつもりで使え。

きっと師匠はそう伝えたかったんだと思う。

その師匠の言葉通り、俺はこれから自分が生きていくために、大切なものを守るためならば、躊躇なく力を使う。それが誰かの命を奪うものであったとしても。

この世界で生きていく。

神様から貰った力があるとはいえ、楽しいことばかりではなく、苦しいこともあるかもしれない。

それでも、この世界で生きていくと覚悟を決めたからには後悔はしないように生きたい。

力強く拳を握り、覚悟を改めて、オオカミ達がいた場所を振り返ることなく、川に沿って歩みを進めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ