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異世界で子育てはじめます。  作者: 夜涙時雨
43/43

43.お揃いの御守り


「準備万端だね」

「うん!」


朝の身支度をして、外出用のローブを身につけ、目をキラキラと輝かせているノワール。そんなノワールの隣にはまだ眠そうに目を擦りながらもノワールと同じく出掛ける準備が完了しているルーチェがいる。

ノワールは今日のお出かけが楽しみで仕方ないみたいだ。

昨日家に帰ってからも何回も「あしたたのしみだねぇ」「どんないしがいいかなぁ…きれいなのがいいなぁ」と言っていた。夜もなかなか眠らずにいたくらいだ。

元々お昼前くらいに家を出ようと思っていたけど、ノワールは今すぐにでも行きたいようだし、2人とも準備バッチリなので予定より早いけど出かけることにした。






目的の店は街外れにあるため、家からは離れた所にある。多かった人並も徐々に少なくなり、街の雰囲気もガラリと変わる。

この街の中でも治安があまり良くない場所だ。そんな雰囲気を感じとっているのだろうノワールとルーチェは俺にくっつき、絶対に離れないようにと手を強く握っている。そんな2人の手を俺も強く握り返す。

建物と建物の間にある入り組んだ狭い道を通り、街外れにひっそりとある店に辿り着いた。建物は古く、壁には蔓が絡まり、見た目はとても怪しい雰囲気の店だ。怪しげな商売をしていてもおかしくない雰囲気はあるが、目的の店はここで間違いない。

看板らしきものもないが、ここで間違いないはずなので、ドアを開けて店内へと足を踏み入れた。


「わぁ…!」


中に入ると外見とのあまりの差に驚いた。

店内は薄くオレンジがかった光に照らされて明るく、商品も綺麗に並べられており、所々に植物が飾られていて清潔感もある。外見とはかけ離れた雰囲気だ。

ノワールとルーチェも外と中の違いに驚いている様子だ。


「おしょととぜんぜんちがうね!」

「……ん」


店内にはたくさんの天然石が置かれている。目的の店はここで間違いないみたいだ。

少しほっとしつつ、店内に視線を巡らせて店員らしき人物を探すが見当たらない。俺達の他にお客さんもいないので、裏方の方にいるのかな?色々と見て回りたいけど勝手に見ても良いのだろうか?

そう考えていると、店の奥のドアから少し雰囲気が怪しげな細目の男性が出てきた。


「おや、珍しいお客様ですね」

「あ、すみません。ここで天然石(パワーストーン)を買えると聞いて来たのですが…」

「はい。この店では多くの天然石を扱っております。ご自由に見ていただいて大丈夫ですよ。もし気になるものがありましたらお声がけください」

「ありがとうございます」


どうやらここの店員のようだ。お言葉に甘えて自由に見させてもらおう。

天然石が置いてある台は高さがあるのでノワールとルーチェにはよく見えない。そのため、2人を抱っこしながら見て回ることにした。






「どれかいいの見つけた?」

「うーん……」

「………」


一通り店内を見て回ったけど、2人ともしっくりくるようなものはないみたいだ。

この店には綺麗に加工されたネックレスやブレスレットなどのアクセサリーになっている既製品のものが多く置かれている。

日本では自分で好きな石を選んでネックレスやブレスレット、ストラップなどを作れるお店もあったけどここではないのかな?

もし自分たちで選んで作れるならその方が良いのかもしれない。


「あの、すみません」

「はい。何でしょうか?」

「こちらのお店では自分で選んでアクセサリーを作ることはできますか?」

「可能ですよ。ただ既製品を購入なさるよりも割高にはなってしまいますがよろしいでしょうか?」

「大丈夫です」

「かしこまりました。どんな天然石が良いかご希望はございますか?種類でも色でもご希望のものがありましたらお持ちいたします」


自分達で作れることはできるみたいだ。よかった。

でも、どんな天然石が良いか…。ノワールやルーチェは天然石の種類なんて分からないだろうし、希望の色で用意してもらった方がいいかな?


「ノワール、ルーチェ。どんな色の石がいい?」

「うーん……しりょいのと、くりょいのと、あとはゆづにいのかみとおんなじいろ!」

「白と黒と俺の髪の毛と同じだとするとミルクティー色だね」

「うん!」

「ルーチェは何色がいい?」

「……ノアといっしょ」

「ノワールと同じ色でいいの?」

「ん」

「わかった。じゃあ、白と黒とミルクティー色でお願いします」


希望の色を伝えると店員さんは「かしこまりました。準備してまいりますので、あちらのお席でお待ちください」と言って、先程出てきた店奥のドアの向こうに消えた。

店員さんに言われた店内の端の方にある席に座って待っていると、暫くしてトレーを持った店員さんが戻ってきた。


「お待たせしました」


店員さんがテーブルにトレーを置いた。トレーの上にはさっき伝えた希望の色をした天然石がいくつか置かれている。同じような色でも天然石の種類ごとに小分けにされている。

分かりやすくてありがたいな。

天然石にはそれぞれ意味や効果があるはずだけど直感で選ぶのも良いだろうと思い、あえてノワールとルーチェには伝えずに選んでもらうことにした。


「それぞれの色を1つずつ選ぼうか。2人ともどれがいい?まずは白いのから選んでみよう」

「うーん……これ!」


ノワールが7種類あった白い天然石の中のひとつを指さす。

それを見た店員さんがノワールが指した天然石の種類と意味を教えてくれた。


「それはホワイトオパールですね。希望の石とも呼ばれていて、ネガティブな感情をぬぐい去り、内面の美しさと才能を引き出し、状況をより良い方向へ導くと言われています。光をあてると虹色の光を放つのも特徴ですね」


置かれた状態だと白にしか見えなかったが、光のあたり方が変わるように体の角度を変えてみると確かにいろんな色に光っているように見える。


「きれい…」

「うん!ルーにぴったりだね!」


ノワールの返答にルーチェは少し照れているようだ。可愛いなと思いながらルーチェにこの石で良いのか尋ねた。


「ん。ノアがえらんでくれたからこれがいい」

「じゃあ、白はホワイトオパールで決定だね」

「うん!」

「次は黒を選ぼうか」


視線を黒色の天然石へ向ける。黒も白と同じくらいの種類があった。どれも綺麗な黒色だなと思って見ているとその中のひとつをルーチェが指さした。


「これ」

「おや、とても素敵なものを選びましたね。それは黒色の天然石の中でも最強と言われているモリオンです。別名は黒水晶ともいいますね。災難や悪運、ネガティブなエネルギーから身を守る『盾』の役割を果たす最強の守護石です」

「わぁ~!!!」


すごいな。モリオンは聞いたことがあるけどそんなに強い天然石だったとは知らなかった。たくさんある黒の天然石の中からモリオンを選んだルーチェもすごい。

守護してくれるというのも安心感があって良いな。

ノワールも「しゅごい!しゅごい!」と言っているから黒はモリオンで決まりかな。

となると、次はミルクティー色か。ミルクティー色の天然石に視線を向ける。こっちは白や黒に比べたら数が少なかった。茶や黄、金に近い色のものもある。

ミルクティー色の天然石なんてあまり聞いたことも見たこともなかったから仕方ないのかもしれないな。

そう思いながらもさっきと同じく、2人にどれがいいか尋ねると2人は一緒に「これ」と言って同じものを指した。


「そちらはルチルクォーツですね︎。良い運を呼び寄せ、直感力や洞察力を高め、自信と決断力を与えて幸運をもたらします。他には金運上昇と物事の本質を見抜くとも言われていますね」

「すごいですね…」


本当に2人ともすごいものを選んでくれた。2人とも同じ天然石を選んだので俺のはルチルクォーツで決まりだ。

あとは選んだ天然石を使ってどんなものにするかだけど、2人と一緒に相談して、3人でお揃いのネックレスにすることにした。

1時間かからないくらいでできるらしいので、完成するまで店の中で待つことにした。

「まだかなぁ…?」「たのしみだね~」と3人で話しながら待っていると時間が過ぎるのはあっという間で、店の奥で作業していた店員さんが完成品を持って出てきた。


「お待たせしました。こちらが完成したものになります」


フカフカなクッションの上に置かれた3種の天然石が付いた3つのネックレス。


「わぁー!!!しゅごい!」

「きれい」

「とても素敵ですね」


3人でネックレスを見た感想をそれぞれ述べると店員さんは「ありがとうございます」と頭を下げたが、むしろ俺の方が感謝したいくらいだ。本当に素敵なネックレスにしてくれた。

付けてみるか聞かれたので、3人でお揃いのネックレスを付けてみることにした。

ネックレスを首にかける。

すると、本当に不思議な力があるのかどうかは分からない。けれど、何か暖かいものに包まれるような、すごく安心する感覚のようなものが湧き上がってきた。

何か、これがあれば大丈夫。そんな感じがする。まるで御守りのようだ。

同じくネックレスを付けたノワールとルーチェに視線を向ける。

ノワールは自分の首元を見てキラキラと目を輝かせ、ルーチェは3つある天然石の上に手をのせながらほっとしたような表情をしていた。

聞かなくても2人ともネックレスを気に入ったことがわかった。

今日3人でここに来たのは正解だった。


3人ともネックレスは身につけたまま帰ることにし、店員さんにお代を払い、素敵なものを作ってくれたことにお礼を言って店を出た。











「すごく良いものを作ってもらったね」

「うん!ぼく、もうこれはじゅしゃない!」

「えー本当に?お風呂入る時も?」

「うん!だってなくなったらやだもん」

「そっかー。ノワールが気に入ってくれたみたいで嬉しいよ。ルーチェは?」

「…ぼくもはずしたくない」

「ルーチェもかー。ふふ…じゃあ、汚れたりしないように家に帰ったら魔法をかけないとね」

「うん!」

「ん」


2人とも嬉しそうで俺も嬉しい。

俺もこのネックレスは外さないようにしようかな。

3人で選んだお揃いのネックレス。俺たちの御守り。そして、3人の宝物。

何かあった時、きっとこのネックレスが俺達の力になってくれる。そんな気がした。



読んでいただきありがとうございます。

次回まではまた間が空いてしまうと思いますが、なるべく早く更新できるように頑張ります。

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